出版社内容情報
43歳、巡査部長の貴衣子は、栗谷交番で新卒の澤田とペアを組んでいる。ある日、ふたりは、アジア系男性の他殺死体を見つけるが――。
内容説明
ある出来事により、刑事課から交番勤務へ異動となった巡査部長の貴衣子。栗谷交番でペアを組むのは、警察官になったばかりの里志だ。里志は自分の歓迎会を欠席したり、「上司の口が臭い」と配置換えを願い出たりと、つかみどころがない。ある日ふたりは、別荘地の保養所で、東南アジア系男性の他殺体を見つける。被害者は近所の通称アジアンアパートに住む技能実習生で、犯人も動機も不明。そんな中、里志が不穏な動きを見せる。貴衣子は里志が事件に関わっているのではと疑念を抱き…。
著者等紹介
松嶋智左[マツシマチサ]
1961年生まれ。元警察官、日本初の女性白バイ隊員。退職後小説を書きはじめ、2005年に北日本文学賞、2006年に織田作之助賞を受賞。2017年、『虚の聖域 梓凪子の調査報告書』(応募時タイトル「魔手」)で第10回島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
タイ子
93
本作はタイトル通り、「匣」すなわち交番勤務の警察官を主役に展開する物語である。刑事課からある理由で交番勤務になったベテラン巡査部長の浦貴衣子。部下となる新人の澤田里志巡査。平穏な小さな町で起こる殺人事件が里志に降りかかり、部下の汚名を晴らそうと貴衣子が調べ始める。警察官と言えども一人の人間、里志の内向的な性格が災いしていく。ひったくり事件、老人の徘徊、外国人技能実習生、いろんな問題の起きる中で貴衣子が辿り着いた真相は?!見事に伏線が回収される終盤はスッキリ!住民を守るちっちゃな「匣」が何だか温かく感じる。2021/05/16
ゆみねこ
86
松嶋智左さん、初読み。この作品の匣とは交番を指す。刑事課から交番勤務に異動となった巡査部長の貴衣子は、新人巡査の里志とペアを組むが、里志の掴み所のない言動に戸惑いを隠せない。引ったくり事件や認知症老人の保護、小さな事件が頻発する中でパトロール中に外国人技能実習生の遺体を発見する。里志の取った行動に違和感を感じる貴衣子、先が気になり一気読み!交番を地域の救いの匣に、警察官の矜持を描いた良作。2022/02/09
えりこんぐ
73
松嶋智左さん初読み。いちばん身近な警察官といえば交番のお巡りさん。このお話にもあったけど、住民カードの確認の時くらいしかお話した事がない。貴衣子のように、普段から声を掛けてくれる顔見知りのお巡りさんが増えるといいな。街に溶け込んでるからこそ、少しの違和感にも気づく貴衣子、かっこいいです!【図書館】2021/07/10
さっこ
73
交番勤務の女性巡査部長、浦貴衣子とペアを組む新人警察官、澤田里志。徘徊する認知症老人など地域の問題に対応する中、外国人労働者が殺される。少しずつ張らされていた伏線を一つ一つ丁寧に回収しながら二転三転し全てが繋がっていく。面白かったです。事件の捜査が主で交番勤務の様子があまり描かれていなかったけど、最後は交番勤務の警察官と住民との信頼のようなものを感じた。少し切ない展開でした。2021/05/23
Ayako
44
匣とは交番の事だという。何とも言い得て妙だ。作者は元警察官、日本初の女性白バイ隊員との事だが、実体験に基づいたリアリティ溢れる描写が印象的だった。巡査部長・貴衣子と新人警官・里志、年齢差が20才近くもある2人が様々な事件や出来事に対峙していく様を描く。外国人の就労問題や家庭内介護のトラブルまで、人々にとって交番は本来の枠組みを越えて、頼れる窓口のような存在なのかも知れない。2021/08/06