出版社内容情報
栄一郎の通夜、恵子の前に彼と不倫し、自殺した女・朱美の幽霊が現れた。人情と義理が息づく時代を活写する、大藪賞作家の新境地。
内容説明
「遺言」余命幾ばくもないお婆さんは、娘の咲子への遺言をレコードに吹き込むことにした。ところが、ご近所連中の悪口をまくし立てるばかりで一向に本題に入らない。録音時間はあとわずか。娘に伝えたいこととはいったい?「白蟻女」長く苦楽を共にした夫の通夜、夜伽する妻・恵子の前に現れた、ちょっと間の抜けた若い女の幽霊。「思い出をめちゃめちゃにしてやる」と彼女が口にした途端、なんと恵子は新婚旅行の日に戻っていた。しかも当時の姿で!反発しながらも賑やかに過去を辿る彼女たち。そして、回想の先に待つ奇跡とは?
著者等紹介
赤松利市[アカマツリイチ]
1956年、香川県生まれ。2018年に「藻屑蟹」で第1回大藪春彦新人賞を受賞しデビュー。’20年『犬』で第22回大藪春彦賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しんたろー
220
短編の『遺言』と中編の『白蟻女』の2編の新作は、今までとは大きく異なって、クスっと笑えてカッと目頭が熱くなる内容で意外な感じ…『遺言』は毒を吐きまくる話かと思いきや人間描写の妙に笑えたし、ラストはイイ話にまとめてキレが良い。『白蟻女』は幽霊を使ってのファンタジーながら、人情と愛が溢れた優しい話で、主人公の健気さが可愛い…正に『白蟻女』ならぬ『白赤松』…社会派SF的な『アウターライズ』以外の作品で毒気やエログロに痺れたファンには物足りないだろうが、私にとっては嬉しい裏切りで、著者の幅広さを知らされた好作品。2020/10/13
starbro
213
赤松 利市 、3作目です。著者の新境地でしょうか、本書は白蟻女ラブファンタジーでした。本書は、短編+中編ですが、オススメは表題作『白蟻女』です。 https://www.bookbang.jp/review/article/6418052020/11/04
いつでも母さん
188
赤松さん・・こんなのも書くのね!が率直な気持ち。タイトル作と『遺言』の2作。遺言は想像できる。だが『白蟻女』ってタイトルはどうなの?って感じで読み始めたら、あらあら・・いいんじゃないですか~!ラストは感動すら覚える。そしてこのタイトルしかないって納得してしまう。自分の魂を削るように生み出したこれまでの作品とは路線は違うがこんな赤松さんも嫌いじゃない。2020/09/11
みっちゃん
178
最初の話、タイトルが「遺言」なのに、一向に本題に入らずに近所の悪口を捲し立てる強烈な岡山弁に笑って笑って笑っていたら、いつの間にかじんわりと温かな心地に包まれていた。次の表題作は、老いた夫の通夜の晩、夫の霊と共に現れた、かつて農薬を呷って自殺した愛人の霊、延々と続く恨み節と回顧噺に飽きかけていたところに、え、えぇっ⁉️そうきたか、まさかのSF的な展開。驚いた。でもこんな優柔不断な男、ここまで意志の強い2人の女から惚れぬかれるような器にはとても…これが摩訶不思議な男女の機微、というものか。2020/11/09
おしゃべりメガネ
167
タイトルからしていつも通り?なんとも意味深な感じがプンプン漂う赤松さん作品ですが、本作はそんな予想をいい意味で大きく裏切ってくれました。2編からなる中編で、どちらもこれまでの赤松ワールドとは大きくかけはなれ、タイトル作に関してはまさかまさかのファンタジーテイストな作品で仕上げており、全く別な魅力を与えてくれています。タイトル作は読み始めでまず、いつもの不穏な雰囲気が漂いましたが、読み進めていくうちに「あれっ?この話って?」とどんどん予想外の方向へ展開していきます。読後感は思ってもなかったキモチになります。2020/11/03