出版社内容情報
上田早夕里[ウエダ サユリ]
著・文・その他
内容説明
ある日、街に現れたイソギンチャクのような頭を持つ奇妙な生物。不思議な曲を奏でるそれは、みるみる増殖していく。その美しい歌声は人々を魅了するが、一方で人間から大切な何かを奪い去ろうとしていた。(表題作)人と人あらざるもの、呪術と科学、過去と未来。様々な境界上を自在に飛翔し、「人間とは何か」を問う。収録作すべてが並々ならぬ傑作!奇跡の短篇集。
著者等紹介
上田早夕里[ウエダサユリ]
兵庫県出身。2003年『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞しデビュー。’10年に発表した『華竜の宮』が、『SFが読みたい!2011年版』のベストSF2010において国内篇1位となり、’11年には第32回日本SF大賞、第10回センス・オブ・ジェンダー賞を受賞している。『SFが読みたい!2017年版』のベストSF2016において、『夢みる葦笛』が二度目の国内篇1位を獲得。’17年刊行の『破滅の王』は第159回直木賞候補作となった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんたろー
169
上田早夕里さん初読みは、SF、ファンタジー、ホラーと様々なバリエーションで楽しめる10の短編集。個性的で豊かな発想で描かれる内容は、空想世界なのに読み進めると身近な街を思い起こされるリアリティがあるので惹き込まれた。所々で科学的な説明が丁寧過ぎると思うほど書き込まれているので煩わしくもあったが、それが世界観を創っているので段々と慣れてきた。昔々、夢中になって読んだ星新一さんのショートショートが、高度な小説になったような気がした。心情もキチンと伝わってくる文章も良くて、特に『眼神』『滑車の地』の2編が好き。2020/06/26
佐々陽太朗(K.Tsubota)
101
10篇の短編を収録。すべて極上のSFです。『眼神』『完全なる脳髄』が特に好み。人間と機械を分けるものはなにか。人の知能と人工知能の違い。人工知能は人の知能を超える能力を持つことは明らかだろうが、そんな人工知能でも人の知能の真似が出来ない部分があるだろう。人工知能はどこまで人に近づけるのか、果たして同化できるのだろうか。そんなことを考えながら本書を読むのは非常にエキサイティングな経験でした。極上の時間を下さった上田早夕里氏に感謝したい。2019/01/24
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
85
山椒は小粒でもぴりりと辛い。突如として街に現れたイソギンチャクのような頭部を持つ謎の生物。それらが奏でる美しい歌声に魅了される人々。その歌声の真の意味とは?表題作「夢みる葦笛」を始めとして、短くてもどれも読み応えのあるSF短編集。生き残る為、或いは環境に適応する為に姿形を変えてもそれは人類といえるのか?人間と機械、AIとの真の違いは何か?そういったことを考えさせられる。短編「魚舟・獣舟」から「華竜の宮」という名作が生まれたように、ここから面白い長編が後に生まれるかもしれない。期待しています。★★★★2020/09/26
naoっぴ
85
この著者の作品は脳内で映像として記憶しているようで、以前単行本で読んだときに感じた情景が忘れられなくてまた読んでみた。うん、この雰囲気。著者の創り出す世界観の中で、人間とAI、未知の生命体との交流が描かれる。どの話も驚くような未来世界だけど、その環境になるに至った経緯がちゃんとあって、諦観しながらも希望の光が感じられる物語になっている。10篇の短編の中で強く記憶に残っていたのは「滑車の地」と「プテロス」。再読してもやっぱりいいな。ほか「上海フランス租界ー」「アステロイドツリーのー」も好き。2019/05/02
みゃ
57
やっぱり好きだな~上田さん(๑^ᴗ^๑)♪どれも粒揃いで五感を刺激される10編。美しさに内包されたおぞましさと恐怖、破滅へ向かう絶望の中の希望、人間とは何かを問う人工知性、並行世界の歴史物など、各話バラエティに富んだ世界観で一気に引き込まれ魅了された。ロマンチックなタイトルを軽々裏切る『夢みる葦笛』/泥棲生物と戦いながら地表で生きる人々を描く『滑車の地』/遠い星で飛翔生物の研究をする(表紙絵)『プテロス』/切ない余韻に浸った『アステロイドツリーの彼方へ』が特に好き♡ この世界観を長編で読みたいなぁ★4.52020/04/09