出版社内容情報
ドストエフスキー五大長篇の一つ。ロシア社会の混乱を背景に、父と子の葛藤、信仰と不信、未成年の魂の遍歴を描く名作。
内容説明
二十歳の青年アルカージー・ドルゴルーキーの成長の記録。複雑な出生で父と母とは無縁に人生を切り開いてきた彼の目の前に、ある日、謎だらけの父親がとつぜん現れる。いったい何者なのか。心は揺れ、憎悪しつつも惹かれる日々。主人公を取り巻く魅力的な「女性」と「悪人」たちの暗躍。
著者等紹介
ドストエフスキー,フョードル・ミハイロヴィチ[ドストエフスキー,フョードルミハイロヴィチ] [Достоевский,Ф.М.]
1821‐1881。ロシア帝政末期の作家。60年の生涯のうちに、以下のような巨大な作品群を残した。『貧しき人々』『死の家の記録』『虐げられた人々』『地下室の手記』『罪と罰』『賭博者』『白痴』『悪霊』『永遠の夫』『未成年』そして『カラマーゾフの兄弟』。キリストを理想としながら、神か革命かの根元的な問いに引き裂かれ、ついに生命そのものへの信仰に至る。日本を含む世界の文学に、空前絶後の影響を与えた
亀山郁夫[カメヤマイクオ]
1949年生まれ。名古屋外国語大学学長。東京外国語大学名誉教授。ドストエフスキー関連の研究のほか、ソ連・スターリン体制下の政治と芸術の関係をめぐる多くの著作がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
榊原 香織
106
全3巻の1 貴族の私生児、複雑な青年と父親との関係。実際の思想的陰謀事件を背景に。 この頃のロシア文学はやたら訴訟多いな2024/08/31
おたま
40
実は『未成年』を読むのには、かなり躊躇した。前評判では、やれ「カオスだ」とか、「失敗作」とか、「難解」とか、いろいろ否定的なことを読んだ。でも、あの亀山郁夫氏の新訳で出たと聞き、それならばと思い読んでみた。まずは亀山さんの「読書ガイド」に目を通す。その冒頭にも「人間関係のあまりの複雑怪奇さ」、「作品全体を包み込む混沌とした気分」と書かれている。「やっぱり」と思いつつも、本文を読む。アルカージーという20歳の青年の手記。これまでのドストエフスキーにはない一人称での語り。これが曲者だった。⇒2021/12/15
Gotoran
39
知識人の貴族ヴェルシーロフは、一家の長でありながら、「宿命の女性」アフマーコワへの情熱に駆られ破滅への道を歩む。一方、彼と使用人の間に生れた私生児アルカージー(主人公)は、日陰の生立ちのため世を憤り、富と権力を得ることを求めながら、父の愛を渇望する。少年から青年への 成長途上の主人公が、父との再会、女性への恋、理想の追求と挫折など、様々な体験を通して、一段上の精神の成熟を獲得していく。光文社古典新訳文庫版3巻の内の第1巻を読んだ。引き続き、第2巻へ。2024/08/26
ケイトKATE
31
ドストエフスキーの五大長編小説の中で最も人気がなく、語られない小説である『未成年』。今回、亀山郁夫が新訳してくれたので読んだ。『未成年』は主人公のアルカージーの独白で進む。アルカージーは貴族のヴェルシーロフと農奴のソフィヤの間に生まれた庶子であった。そのため、周りから蔑まれることが多く、卑屈な性格を持つようになった。20歳になったアルカージーは、ヴェルシーロフと出会うが嫌味や悪態ばかり突く。アルカージーの言葉は、憎しみに満ちているが拒絶までに至っていないのは、心の底では愛を求めているように思えてしまう。2023/03/17
みつ
28
四十数年前の大学時代、ドストエフスキーの五大長編の最後に読んだ作(当時は新潮文庫)で、ひどく暑い時期に読んだことしか記憶にない。圧倒的な力で引き込まれる彼の作品では極めて異例で、意を決して再読し始めた今回も、現時点では、解説にもあるように「混沌」と「無秩序」の中を彷徨うばかり。主人公=語り手のアルカージーの一人称小説であるが、「ロスチャイルドになる」を持つ彼の内面は、他の作品の登場人物の如く「哲学」を饒舌に語ることは希薄。裏表紙にある「魅力的な「女性」と「悪人」たちの暗躍」もピンとこない。ともかく次巻へ。2024/06/11