出版社内容情報
イギリスの王政への批判論を力強い文体で展開し、アメリカ人を奮い立たせた。アメリカの民主主義を考えるうえでも重要な書物。
内容説明
イギリスと植民地アメリカの関係が悪化するなか、王政、世襲制の非合理性を暴き、国家を冷静な眼差しで捉えたペイン。独立以外の道はなしと喝破した小冊子「コモン・センス」は世論を独立へと決定づけた。ほかペインの筆の力が冴える「アメリカの危機」「厳粛な思い」「対談」も収録。
目次
コモン・センス
アメリカの危機
厳粛な思い
対談
著者等紹介
ペイン,トマス[ペイン,トマス] [Paine,Thomas]
1737‐1809。文筆家・政論家。イギリスのノーフォーク州セットフォードに生まれる。コルセット職人、収税吏の職を経た後、ロンドンにてベンジャミン・フランクリンの知遇を得たことをきっかけに1774年11月よりアメリカに渡り、文筆活動を始める。’76年に刊行したアメリカ独立の正当性と必要性を訴えた小冊子『コモン・センス』が爆発的に売れ、世論を独立へと決定づけた。その後、革命軍に自らも従軍する
角田安正[ツノダヤスマサ]
1958年生まれ。防衛大学校教授。ロシア地域研究専攻。在ロシア日本国大使館専門調査員を経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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molysk
62
独立戦争の開戦後、間もないアメリカ。イギリスからの独立を迷う人々の間に、爆発的に普及した小冊子があった。曰く、人間は生まれながらにして暴力的な権力に対して抵抗する権利を持つ。イギリスの君主制と世襲制は、平等な権利を保証する自然権に反する制度である。アメリカのイギリスからの独立には、経済、外交、統治上の利点があり、アメリカには独立を達成する能力が備わっている。アメリカにとって独立以外の道はない、これは「コモン・センス」、すなわち「常識」である――。独立の機運を大きく高め、アメリカの歴史を動かした一冊。2021/09/27
kazi
26
世界史の教科書で学んで名前だけ知ってた。活字離れと言われる時代に、このような売れる見込みがあるとは思えない政治パンフレットまで新訳を出してくれるなんて、光文社古典新訳文庫の志高さに敬服です。読んで実感するのは、これだけ有名なタイトルだけど非常に短いんだなってこと。やはり広く植民地の市民を独立に焚き付けるために書かれたものなので、長々と回りくどく正確に論述するよりも、感情的な勢いを重視したという感じでしょうか?2024/03/23
ともブン
12
独立への気運が高まりつつあったアメリカで出版された本。端書きにある『人の考えを改めさせるのは、理屈ではなく時間である』の一文が興味深い。統治制度の歪みを歴史やキリスト教の教えをもって批判し、産業や軍事など今流行りの地政学の見地から独立後の安泰を説き、アメリカ独立へと読者を鼓舞する。 独立宣言は出版半年後、フランスがアメリカ独立を認めたのは2年後、イギリスは17年後と長い戦いだったようだ。著者本人はイギリス生まれ。真の狙いは何だったのだろう?解説にはその後の人生が綴られていたが想像を掻き立てられる。2024/01/24
とむとむ
8
米国独立の大きなエネルギー源になった小冊子。一方、この本が出版される前から、アメリカ植民地の民意は独立に傾き始めていたというから、時代を変えたというよりは、時代に選ばれた本だと言えるだろう。当時の米国で記録的な販売数を記録したということ自体が、この本の持つ自由に対する渇望や宗教的な情熱が、その世相を明らかにするものであったことを示している。米国の源流を示す、まさに人類史上の古典だ。2021/10/26
SK
4
アメリカやイギリスの歴史に詳しくないので、味わいきれなかった感じはある。君主制を批判するような下りは、今でも有効だと思う。2021/11/11