出版社内容情報
ギャンブルにのめり込み、破滅していく人間の深層心理を鋭く抉り、生々しく描いた“自伝的”作品。
内容説明
ドイツの町ルーレッテンブルグ。賭博に魅入られた人々が今日もカジノに集まる。「ぼく」は将軍の義理の娘ポリーナに恋心を抱いている。彼女の縁戚、大金持ちの「おばあさん」の訃報を、一同はなぜか心待ちにしていて…。金に群がり、偶然に賭け、運命に嘲笑される人間の末路は?
著者等紹介
ドストエフスキー[ドストエフスキー] [Достоевский,Ф.М.]
フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー。1821‐1881。ロシア帝政末期の作家。60年の生涯のうちに、巨大な作品群を残した。キリストを理想としながら、神か革命かの根元的な問いに引き裂かれ、ついに生命そのものへの信仰に至る
亀山郁夫[カメヤマイクオ]
1949年生まれ。名古屋外国語大学学長。東京外国語大学名誉教授。ドストエフスキー関連の研究のほか、ソ連・スターリン体制下の政治と芸術の関係をめぐる多くの著作がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かみぶくろ
62
3.6/5.0 ルーレッテンブルクって架空の街の名前、なかなかなネーミングセンスですね。心理描写は相変わらず精緻で、ルーレット場の有象無象群がるカーニバル感は迫力あり。にしても、いつの時代もどこの国でも、ギャンブルで破滅する人間の狂った心理プロセスは同じだなあ。2023/01/31
kazi
51
うおおお、面白かったです!文学史上屈指のルーレット狂による、ルーレット小説。やはりドストエフスキーの後年の作品に外れ無しですね!読む前はあんまり期待してなかったけど、これは大当たりでした!まず主人公の人間性が興味深い。『大いに教育を受けた人物ですが、すべての面で未完成で、信仰をなくしており、不信仰のままいる勇気はなく、権威に立ち向かいながら、権威を恐れている。』非常にドストエフスキー的な主人公ですね!そんな主人公が自身を注ぎ込む舞台がルーレットなのです。2020/09/20
ころこ
33
普段は社会の見えなかった部分が可視化されていて、今、賭博が人間にとって生きるために必要だということを目の当たりにしている。彼らは暇つぶしのために通い続けているのではなく、依存症という正常からの逸脱でもなく、大金を手にすることが明確な目的だともいえない。亀山は解説で興味深い一文を記している。「ルーレットは、一瞬の間に人間を天から地上に引き下ろし、他方、地上から天へと引き上げる力を有している」彼らは自粛の非難の中、敢えて行くことで日常の劣等感を逆転させてみせ、罹患しないということでさえもルーレット化しているホ2020/04/29
特盛
32
評価3.8/5。ドストエフスキー中編。ギャンブルと金と愛の話。ハラハラ、ドキドキのスピード感。ギャンブルは成功と破滅両方をもたらす可能性=一見ニュートラルであるようで、結局破滅しか先には待っていない。理性と価値観が変容してしまうのだ。賭博に溺れる人間の心理が良く描かれている。「自分は大丈夫」という人間ほどやばいのだ。全てを失ってから気づくと、美しいと思えたこと、大事にしていたことも、考えが変わってしまう。自分にはどうしようもない不可逆な脳内報酬系の変更、全てに関心が薄れる。これは恐ろしいことだ。2024/08/24
星落秋風五丈原
28
ドイツの町ルーレッテンブルグ。賭博に魅入られた人々が今日もカジノに集まる。アレクセイは将軍の子供達の家庭教師をしながらカジノに通い、義理の娘ポリーナに恋していた。将軍は謎めいたフランス人女性マドモアゼル・ブランシュに求婚するつもりだったが金がなく、抵当に取られる始末。マダム・ブランシュももちろん賭博に目がないがこちらも金がない。皆が当てにしているのが将軍の祖母の遺産だった。ところが祖母がルーレッテンブルグにやってきてカジノでビギナーズラックで莫大な儲けを手にする。 2022/10/22