出版社内容情報
南北朝時代の後深草院の後宮に仕える女性・二条14歳の春。より身近に感じられる文体で大河小説として読めることを目指した。
内容説明
後深草院の寵愛を受け十四歳で後宮に入った二条は、その若さと美貌ゆえに多くの男たちに求められるのだった。そして御所放逐。尼僧として旅に明け暮れる日々…。書き残しておかなければ死ねない、との思いで数奇な運命を綴った、日本中世の貴族社会を映し出す「疾走する」文学!
著者等紹介
後深草院二条[ゴフカクサインニジョウ]
1258(正嘉2)‐?鎌倉時代末期の日記文学作者。本名と没年は不詳。父は久我雅忠、母は四条隆親の娘である大納言典侍。4歳で後深草院の御所に初めて出仕し、14歳で後宮生活に入る。後深草院の女房として寵愛される。西園寺実兼(雪の曙)や院の弟である性助法親王(有明の月)らとも関係を結んだ。のちに宮中を追放され、出家。憧れていた西行にならい、尼僧として関東、四国、中国地方への旅に出、歌を詠む。後年、『とはずがたり』を著す
佐々木和歌子[ササキワカコ]
1972年、青森県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科修士課程修了。専門分野は日本語日本文学。(株)ジェイアール東海エージェンシーで歴史文化講座の企画運営に携わりながら、古典文学の世界をやさしく解き明かす著作を重ねる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
47
時代は鎌倉時代と言っても良いでしょう。中世の貴族社会を描いた作品です。数奇な運命が紡がれているのに引き込まれました、2022/10/18
巨峰
45
御所(後深草院)が、めっちゃ悪い人ですね。いい意味でも悪い意味でも。二条はがんじがらめに縛られて。体は自由気ままでも、心が縛られてどうしようもない感じ。色悪といってもいい御所の存在がこの物語を覆いつくします。今日の日本の恋愛小説に比しても、この物語は恋愛小説としても世界的価値があるのではないかと思います。歴史小説好きとしては鎌倉後期、のちの南北朝の萌芽が描かれておりめちゃめちゃ興味深かったです。2024/11/01
きいち
36
何これ、二条ちゃんむちゃ可愛いやん!◇14で育てられた院の後宮に入り、その後もいろいろ好きなようにされて流されつつも、でもちゃんと自分から好きな人とはしっかりと結ばれ、プライドが傷つけられたらがっちり報復、なんだかんだしっかり我がある。26で御所から放逐、って何があったのかは伏せられているけれど、宿願の出家後は自らの教養と歌の力で支援者を得ながら東に西に好きに旅してて人生楽しんでるし。◇でも、二条の生きた証はこの本以外にない。…この回想は本当のことなの?そう考えると怖くもなる。◇読みどころ多く超おススメ。2019/12/16
みねたか@
33
鎌倉末期、宮廷に仕えた女性二条の数奇な生涯。前半生を彩る三人の男。好色で嫉妬深い「後深草院」が時折見せる深い情愛。初恋の相手「雪の曙」宮廷を鮮やかに立ち回るやり手の色男。出家の身ながら二条に身を焦がす「有明の月」。彼らのコントラストが鮮やかで渦中の二条の乱れる思いが胸に迫る。後半,尼となって諸国を旅する二条。武蔵野の寂しさ,豊饒な瀬戸内,どこにいても思い出される後深草院の面影は、出家しても俗世から逃れられない人間の性。700年の時を飛び越え,疾走する文学を魅せてくれた訳者の力業に喝采。2020/05/14
崩紫サロメ
32
昭和13年に初めて世に知られた幻の古典。後深草院の女房として寵愛を受けながら、他の男とも恋をしたり、共寝を強いられた二条という女性の物語は、戦後、多くの注釈や翻案ものが出て、その像は様々に見える。これは1冊しかない写本の全訳であるが、訳者のまえがきは、波乱に満ちた宮廷生活だけではなく(ここがやはり面白く、痛々しくもあるのだが)、後半の尼として旅を続ける巻が持つ疾走感に気付かせてくれ、新しい視点で読むことができた。2022/06/28