内容説明
ある男が橋の上で絞首刑になろうとしていた。足元の板が外され川に落ちた彼が、敵の銃弾を逃れてたどり着いたのは…「アウルクリーク橋の出来事」。森に住む女が恋人からの求婚を頑なに拒んだ理由とは…「豹の眼」。ひたすら「死」を描き続けた短篇の名手ビアスの14篇。
著者等紹介
ビアス,アンブローズ[ビアス,アンブローズ][Bierce,Ambrose]
1842‐1914?。アメリカのジャーナリスト、作家。オハイオ州の貧農の末っ子に生まれ、16歳から新聞植字工など、職を転々とする。南北戦争(1861~65年)で北軍に志願し、激戦を経験。除隊後、サンフランシスコの新聞・雑誌に投稿しはじめ、すぐに時評欄を任される。政治家・大実業家などに筆で挑み、その鋭さで「ビター・ビアス(辛辣なピアス)」と呼ばれるようになる。1880年代末には、妻との別居、長男の決闘による死と家庭の不幸が続くが、創作面では「アウルクリーク橋の出来事」など代表的短篇を生み出す
小川高義[オガワタカヨシ]
1956年生まれ。東京工業大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nuit@積読消化中
119
面白かった!『悪魔の辞典』で有名なビアス。まさかこんな素晴らしい怪奇短編を書いているとは!!いつか読もうと手に取らず来ておりましたが、こんなに面白いのであれば、もっと早くに読んでおけば良かった。特にこの本の収録作は全てにおいて面白い。この時代特有の厳かな雰囲気に加え、戦争経験者であるビアスの“死”というものへの考え方、感じ方が読んでいて深く伝わってくる。芥川龍之介が影響を受けてのちに書いたという『藪の中』は未読なので、さっそく読んでみたい。2017/09/05
文庫フリーク@灯れ松明の火
87
【奇妙な味 海外読書会イベント】『悪魔の辞典』しか知らなかったビアス。こんな味わいの短編が有ったとは。解説の〈ビアスの幽霊もの‐境界をさまよう漂泊の物語〉では「シロップの壺」「チカモーガの戦い」視点を変えた連作短篇「月明かりの道」が奇妙、且つ味わい深いエンターテイメント。最も好みは、お互いに惹かれ合いながら、隔てられた壁を叩くことで想いを伝える「壁の向こう」壁を叩くかそけき音、一つ、二つ、三つ。自らの狭量償うため冥界からの《死の三連打》を甘受する主人公。冥界で、彼女と再び巡り逢えることを祈らずには→2014/04/29
ehirano1
83
「死」が一貫したテーマである本書、というか「死」を題材とした短編集。結構はまってしまいました。特に、「死の世界」を描いたのではなく、生と死の境界が巧く描かれていることに感銘を受けました。2023/10/06
財布にジャック
63
幽霊が出ますが、あまり怖くはないです。死を題材にした短編集で、戦争がらみが多めです。「アウルクリーク橋の出来事」は流石に題名になるだけあってお見事ですが、「レサカにて戦死」「チカモーガの戦い」もとても印象に残りました。決して明るい話ではないので、読むのに覚悟が必要ですが、芥川龍之介にも影響を及ぼした凄い作家さんなので、古典新訳文庫で出合えてラッキーでした。2012/06/03
ゆのん
36
読友さんのレビューを見て即買いした。面白くてあっという間に読んでしまった。まず第一にこの時代の雰囲気が大好き。そして今回この本を読んでいて気が付いたのだが「幽霊」モノが好きみたい。呪ったり祟ったりはどうか分からないけど本作の様に冷たい空気の中にそっと佇む感じが好き。そして間々に入っている「悪魔の辞典」からの抜粋が「ほぉ」「なるほどねぇ」と妙に納得したり「ふっ」と笑えた。恥ずかしながら初読みだったので「悪魔の辞典」ぜひ読みたい。レビューあげて下さった読友さんに感謝っ!2017/09/26