内容説明
英国に留学中の夏目漱石は、夜毎、亡霊の声に悩まされ、思い余って、シャーロック・ホームズの許を訪ねた。そして、ホームズが抱える難事件の解決に一役買うことになる。それは、恐ろしい呪いをかけられた男が、一夜にしてミイラになってしまったという奇怪な事件であった!年少の読者にも読みやすい「総ルビ版」で贈る、第12回日本ミステリー文学大賞受賞記録企画。
著者等紹介
島田荘司[シマダソウジ]
1948年広島県生まれ。武蔵野美術大学卒。’81年に刊行された『占星術殺人事件』で本格ミステリー復興の旗手となる。新たな才能の発掘に力を尽くしながら、常にミステリー界の最前線を走り続け、御手洗潔、吉敷竹史の両シリーズは圧倒的な人気を誇る。また、近年は「冤罪事件」や「死刑問題」に象徴される日本人論などの社会的な発言や著作でも注目を集めている。2008年には、第12回日本ミステリー文学大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
🐾Yoko Omoto🐾
125
めちゃくちゃ面白かった!!ホームズと漱石どちらのファンもきっと満足できること請け合いの島荘流パスティーシュ作品。イギリス滞在中の漱石が下宿部屋に夜な夜な出てくる正体不明の声に悩まされたことをきっかけにホームズ・ワトソンと知り合い、その後に起こった奇怪なミイラ男の事件に巻き込まれる。漱石とワトソンそれぞれの視点で一つの物語が交互に語られる構成が面白く、特に出会ったばかりのホームズ像を語る漱石の手記は爆笑必至(笑)両作品の小ネタも多く始終ニヤニヤしっぱなしでミステリパートからラストのホッコリまで大満足の一冊。2014/09/01
mocha
108
留学先のロンドンで、漱石とホームズが出会ったら…。漱石目線のホームズはなんとも奇矯な御仁。ワトソンの語りと交互に綴られるので、子ども向きとしては読みにくいかもしれない。史実と混同しそうだし。でも、ホームズものを踏襲した古めかしい文体は、懐かしくもうれしい。別れのシーンがとてもきれいだし、にやりとさせられた。あとがきならぬ「特別エッセイ」に書かれている本格ミステリーの定義には今さらながら「へえ〜!」著者の児童向け『透明人間の納屋』を再読したくなった。2016/05/05
chiru
100
なんて魅力的な設定! ロンドン留学中の夏目漱石とホームズがタッグをくみ、一夜にしてミイラとなる怪事件に挑みます。 かなり変人寄りのホームズと漱石の距離が徐々に縮まり、別れのシーンは暖かく感動的。 ラストの清々しさは、わたしが読んだ島田さんの作品の中で一番かも。 そして、さりげない『猫』エピソードに「あっ!!」と言わされてしまうのも微笑ましいです。 パロディとロマンのブレンドが心地よく、思いがけない優しい謎解きも大満足。 ★52019/04/13
みゆ
83
おもしろかった~ヽ(^o^)丿 夏目漱石は英国留学中にベイカー街でホームズに出会い、怪奇な難事件解決に一役買っていた!というお話。ホームズの変人ぶりや英国人の東洋誤解に『ここまでディスっていいの?』って大笑い。でも全体に流れるホームズ物らしさは健在で、後半のホームズはとってもカッコ良かったです。私はシャーロキアンではないので気づかなかった仕掛けがたくさんあったのではないかと思うのですが、それでも十分楽しめました(^^♪2019/08/29
セウテス
83
英国滞在中の夏目漱石が、シャーロック・ホームズを訪ねた事から、一夜にしてミイラになってしまった怪事件を手伝う事になります。本作の特徴であり注目すべき処は、語り手がワトソンからみた同じみのホームズと、漱石からみたチョッと変わった印象を受けるホームズを、交互に描いて話が進む事である。勿論各パートの語り口が両名の特筆を見事に表現しており、ホームズのパステーシュとしては、完成度の高い作品になっていると思います。ミステリーとしても、島田氏らしい落とし方をしたなぁと充分楽しめますが、最期の締め方には拍手を贈ります。2016/04/14