出版社内容情報
廃校が決まった柳垣小学校で最後の秋祭りが行われる。あの日、担任の先生と町の外からやってきた絵描きの男の姿を見てしまった類と玄。息子の母親会で祭りの準備をしていた類は、人気作家になった玄と再会するが――「ドヴォルザークの檻より」類の夫、悟志の元浮気相手である千沙は、東京でバツイチ子ありの男・翔琉と暮らす。翔琉が娘の結婚式に参列する日、千沙は廃校が決まった母校の秋祭りを訪れ――「いつかのあの子」
内容説明
小学生のとき、担任の先生と町の外からやって来た男が駆け落ちしたのを忘れられない主婦。東京でバツイチ子持ちの恋人との関係に寂しさを覚える看護師。認知症の義母に夫とのセックスレスの悩みを打ち明ける管理栄養士。父と離婚した母が迎えに来て、まもなく転校することになる小六の女の子。発達障害のある娘を一人で育てるシングルマザー。遠き山に日は落ちて―小さな町で、それぞれの人生を自分らしく懸命に生きる女性たちを描いた感動作。
著者等紹介
町田そのこ[マチダソノコ]
1980年生まれ。「カメルーンの青い魚」で、第15回「女による女のためのR‐18文学賞」大賞を受賞。2017年同作を含む『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』でデビュー。2021年『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
391
12月の第一作は、町田 そのこの最新作、町田 そのこは、新作中心に読んでいる作家です。 衝撃的な一文で始まる廃校真近の田舎における女性達の群像劇連作短編集、思いっ切り閉塞感が漂って来ました。 残念ながら著者にしては、感動少な目です。 https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334104511 【読メエロ部】2024/12/01
さてさて
362
北九州にある『かなた町』の『来年春には廃校になることが決まっている『柳垣小学校』で『廃校前の最後のイベント』として開かれる『柳垣秋祭り』に集う在校生、卒業生の5人に光を当てるこの作品。そこには、『男尊女卑』の感覚が強く残る人々の関係性を鋭く抉る物語が描かれていました。北九州在住の町田そのこさんだからこそ描けるリアルな空気感に驚くこの作品。『ドヴォルザーク』の『家路』が良い味を醸し出してくれるこの作品。抑圧から解き放たれていく彼女たちの心の中を思う物語の中に、過去と現在を巧みに交差させる、そんな作品でした。2025/03/05
bunmei
322
小学校時代、担任の女教師が学校でセックスをしている所を目撃した…というショッキングなシーンで始まる本作。あれから数十年の年月が流れ、小さな村のその小学校も廃校になり、閉校式典に集った嘗ての同窓生の女性達。村社会の中での閉塞感に息を詰まらせ、生き方に自問自答を繰り返す女性達の本音と葛藤が綴られていく。女の性(さが)としての宿命と共に、隣の芝の青さへの渇望が潜んでおり、女性の強かさも伝わる。そんな中、ドヴォルザークの『家路』が流れ夕日に染まる時、各々の生き方にも光明が差し込む町田作品らしい結末が待っている。 2024/12/16
hirokun
266
★3 福岡の田舎町を舞台にした連作短編集。今も残る男尊女卑の気質、家制度、家父長制の因習、地域の人たちとの濃密な人間関係と必要以上の忖度、それらが通奏低音のように作品中に抑圧的に響いている。文章中に出てくる自分らしく自立して生きていく事の必要性については強く感じられるものの、私自身の読解力の不足により、町田さんのこの作品に込めた意思を理解することが出来なかった。内容的に深い作品なのだろうが、私が町田さんに期待するいつもの作品とは少し系統が違っており残念!!2024/12/20
のぶ
263
廃校が決まった小さな小学校で、最後の秋祭りのイベントのために集まった母親会のメンバーたちが、明日の料理の仕込みに忙しい。それぞれの母親たちの振る舞いで性格がわかるようで、こんな人いるよな、などと思いながら読み始める。まるでドラマを見ているかのように彼女たちの現在と過去が、そして子どもたちの思いが丁寧に描かれていて、学校内外の人の流れや景色まで目に浮かんでくる。幾つかの記憶を積み重ねながらときに懐かしみながらも明日へと希望を抱えて生きていく。いつもの町田さん同様に、福岡を舞台にした世界観を堪能した。2024/12/15