出版社内容情報
ロンドンで約10万人の死者を出したペスト大流行の詳細を、当時の公的文書や個人の記録などを基に再現した小説。伝染病の爆発的流行や都市型災害の勃発、その拡大と対策に関する貴重なドキュメントとして、今日も読み継がれている古典である。 群像新人文学賞評論部門を受賞し、文芸批評でも活躍している英文学者による、斬新な視点からの新訳。
著者・訳者紹介
著者
ダニエル・デフォー(Daniel Defoe)(1660 - 1731)英国十八世紀を代表する作家、ジャーナリスト。代表作『ロビンソン・クルーソー』は世界中で愛読され続けている。
訳者
武田将明(たけだ まさあき) 1974年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科准教授。専門は18世紀イギリス小説。2008年に「囲われない批評 東浩紀と中原昌也」で第51回群像新人文学賞評論部門を受賞し、日本の現代文学についても旺盛に批評活動を繰り広げている。訳書にデフォー『ロビンソン・クルーソー』(河出文庫)、サミュエル・ジョンソン『イギリス詩人伝』、共著に『イギリス文学入門』(三修社)、『『ガリヴァー旅行記』徹底注釈 注釈篇』(岩波書店)など。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
139
1665年ロンドンで猛威をふるったペスト。デフォーは1660年生まれだから、史実を調べ創作を交えている。大陸でペストの死人が出ているという噂、ロンドンで最初の死者。しかし、死亡原因は巧みに隠される。2月の寒さが流行を抑える。春から夏にかけての流行の爆発。しかし、秋を迎えるころ、感染しても死なないひとが増えていく。収束の始まりだ。この間の街のパニック、しっかりと行動し続けた行政府、この機に乗じて起こる詐欺、窃盗、怪しげな宗教。身を挺して働いた医者や宗教家たち。冷静に物事を判断し書き記したデフォーの道徳性。2017/12/13
ケイ
130
読書会準備のために再読。改めて、作者デフォーの偉大さに感服した。パンデミックとなる病が起こってから終息するまでについての記録を17世紀にここまで残せたということ。【数字の追い方:最盛期には当時のロンドンで毎週7000人ほどが無くなっている。 人々の病への慣れ:収束しかけては気が緩む。怪しげな情報の蔓延とたやすく騙される人々。元気な人が拡散していったということ、等々】ドラマ仕立てにしても、事実を伝えることが損なわれていないすばらしさ。改めて彼の作品をおってみようと思った。2020/04/20
ケイ
128
この時期に再読。350年前であり、ペストはウイルスでなく細菌であるが、患者が出てからの人々や行政の反応が今と同じ。ならば、今から起こることも同じ過程を辿ると思える。必要なのは過去から学ぶことで、SNSに出回る情報は必要なし。p12 「この問題について詳しく書き留めておくが、それは後の時代の人達が同じ災難にみまわれ、同じ選択を突きつけられたとき、ひょっとして意味を持つかもしれないと思ったからである。つまり僕が望むのは、この記録が後の人々の行動の指針になってくれること」しっかりと気持ちを受け取りました。2020/03/30
翔亀
45
【コロナ9】1665年の「ロンドンの大ペスト」の悲惨さを記録した作品(1722)。「ロビンソン・クルーソー」(1719)の後に書かれた。執筆年をみればお判りだろうが、デフォーはペストを体験したわけではない。繰り返し流行したペストがマルセイユ(1720年)を襲ったので、ロンドン市民に危機を訴えるため取材したという。■ひたすらペストに襲われたロンドンのことしか書かれていないので、デフォーの作品でもなけれは後世には残らなかっただろう。こうして同時代の証言を読めることは幸せだ。だが、筆の立つあのデフォーとは↓2020/05/06
yumiha
44
Eテレ『100分で名著』をきっかけに読みたくなった本。コロナよりペストの方がかなり致死率が高い。家族の誰かが罹患すると、一家全滅という場合もある怖ろしさ。歩いている人がバッタリ倒れてこと切れていたという怖ろしさ。でもコロナも同様だなと思ったのは、「もっとも有効な薬は逃げること」や「見た目は感染していない人たちが感染源」という点。作者デフォーは、後の人たちのための教訓として、本書を書いた。デフォーの教訓はありがたく受け留めよう。さまざまなエピソードを交えた1665年のロンドンのむごい様子はつらいが。 2021/01/18