内容説明
ギリシャ劇においては、芝居の筋が込み入ってくると、「機械仕掛けの神」が舞台に登場して、あらゆる矛盾を解決してくれることになっていた。現代では「機械仕掛けの神」は「電子仕掛けの神」に進化した。つまりコンピュータという神が出現した。だが、「電子仕掛けの神」は、たくさんの既存の矛盾を解消しながら、同時にさまざまの新規の矛盾を増殖しはじめた。その例をいくつか紹介すれば、電磁記録の証拠性、ソフトウェアの著作権、情報通信サービスの損害賠償、コンピュータの不正利用、プライバシー情報の保護、通信ネットワークの独占、地域社会の情報化、情報通信サービスの国際化など、さまざまの課題にわたる。これらの課題について、その実態を紹介し、あわせてその問題点を検討してみようというのが、著者の意図である。もし、読者諸氏が、情報社会の現在と近未来について、その意味を問い、その在りかたに思いをめぐらされているならば、諸氏は、この本のなかで、著者に議論を挑むことができるはずである。著者はその議論が楽しく役にたつものであることを願っている。
目次
1 電子化社会の到来
2 電子化情報の知的所有権
3 システムの脆弱性
4 システムとプライバシー
5通信事業の独占と競争
6 地域情報システムと規模の経済
7 国境を越えるコンピュニケーション
8 多元化・柔軟化へ