内容説明
「学校を欠席する子ども」を社会はどうとらえてきたのか。「不登校」「長期欠席」「登校拒否」といった認識の仕方や問題のとらえ方、すなわち、知識がつくられたプロセスの政治性を構築主義の観点から分析する。「欠席の歴史」がここに明らかになる。
目次
問題の所在と本書の構成
第1部 不登校のポリティクスに向けて(「長期欠席」と「不登校」の現在;先行研究の検討;不登校の知を問う)
第2部 就学と欠席を通じた国家の編成(戦後の長欠者問題と国民国家の再編成;長期欠席から「学校ぎらい」の「出現」へ―戦後教育の転換;「登校拒否」から「不登校」へ―ポスト福祉国家における社会統制の変化)
第3部 不登校と親密圏のポリティクス(不登校をめぐる政治―朝日新聞家庭面の分析から;不登校からの家族秩序への問い直し)
不登校の現在とこれから
著者等紹介
加藤美帆[カトウミホ]
1972年生まれ。早稲田大学大学院教育学研究科修了、博士(教育学)。現在、お茶の水女子大学学校教育研究部専任講師。専門は教育社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆう。
26
「長期欠席」「登校拒否」「不登校」などの認識がどのような変遷を得て今日に至っているのかを知るうえでは、とても参考になる研究だと思います。そして、不登校の論じにくさに学校の硬直性を批判すると教育の市場原理に結びやすくなり、他方で不登校の社会的不利益を強調すれば新保守主義の議論に取り込まれやすくなるという不登校問題の論じにくさの指摘は鋭いと思いました。本著は社会構築主義に立っています。そのため不登校はつくられた問題だとしています。そこには疑問点もありましたが、本著全体は丁寧な研究書だと思いました。2016/12/11
たかたか
1
不登校に関して、政治・歴史・行政・家族・学校と様々な角度から検討されていて、考えるきっかけとしては十分だった。2017/06/25
peisaku2014
1
不登校への関心,というより言説資料の意味づけ方や「ポリティクス」という観点の設定の仕方を学ぶために読んだ。そういう意味では,知識の編成過程の政治性,すなわち秩序が作られていくダイナミックな過程を分析することの意義・作法は学ぶことはできた。特に,単なる数値としてではなく,社会を構成していく実践として(公的な)調査を位置付ける姿勢は参考になった。ただ,そういった方法的態度への説明がやや過剰な気がして,実際の資料を用いた分析に物足りなさを感じたが,通常こんなもんなのだろうか。2014/02/26
一人
1
読了――というより要点を追った感じだろうか。「どのようにして『不登校』は問題とされてきたか」を扱っている(「『不登校』の何が問題か」ではない)。そもそも「不登校」はそれ自体が問題なのではなく学校中心の社会の中ではじめて問題とされる、とそんな感じ。だから(学校に行かなければ生きづらい)社会の方を変えるべき、とそんな論旨だろうか。ただそれでも現状の社会での「不登校」者が生きるうえでの不都合をそのままにはしておけない訳で。社会の変革を目指しつつ、なんとか学校の代替機能を「不登校」者の周囲が果たしていくことが必要2014/01/19
しょうゆ
0
2000年代以降に書かれた不登校を読み解く研究書の中で、個人的にはベストだと思っている。ありがたい気持ちで読ませて頂いた。2021/01/24