出版社内容情報
サルトルは知識人の役割を語りヴェイユにふれて,彼女が「労働生活に耐え搾取について明晰な体験をもった」ことに言及した。その稀有な体験の貴重なドキュメントである。
抑圧、疎外の現実から主体的立場を
回復するとはどういうことか。
ここに現代の生々しい証言を送る。
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【目次】
序文 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ アルベルチーヌ・テヴノン
アルベルチーヌ・テヴノン夫人にあてた手紙三通
ある女性への手紙
ボリス・スヴァリーヌへの手紙
Xへの手紙の断片
工場日記
断片
工場長への手紙
金属工業女子労働者の生活と罷業(工場占拠)
ある組合員への公開状
オーギュスト・デトゥーフ氏への手紙
北部の紛争から引き出すべき教訓に関する考察
企業内の新しい内部制度のための計画の諸原理
合理化
労働の条件
工場生活の経験
奴隷的でない労働の第一条件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きのみ
4
「わたしの周りにべたべたとへばりついていて、当たり前を“当たり前”と思わせている何かを知りたい」と言ったら「そんな難しいことを」と返された。 だがその彼は恐らく社会では成功している人間だろう。いわゆる一流大学に入学、名の知れた企業に就職したのだから。 彼女の本は半世紀以上前のもの。それなのに彼女が記した当時の現状や課題はこの豊かになったはずの現在の日本で起きていることと何ら変わらないと思った。 彼らが見つめた先にあった何かを私はまだ掴めていないが、掴めた人間も未だ次のステップへ踏み出してもいないと思う。2014/05/26
Hiroki Nishizumi
2
一文一文が心の襞に沁み込むような気がする。何度読み返しても心に響く。状況は約百年前と変わっていない。それでよいのだろうか、否違うはずだ。どうすればよいのだろうか、考えよ。2023/07/11
Hiroki Nishizumi
2
四半世紀ぶりに読了。依然状況は変わっていない。自ら工場労働者として働き、そこで机上の理論のはかなさと理想へのギャップを綴った名著。自分としては(読めなかった資本論)やカムイ伝よりも具体的な階級闘争記録。定期的な再読と考察が必要だと感じる。p.193に書いてあるように、奴隷に落ちないためには永遠の努力が必要なのだ。2012/05/04
森野あやめ
1
シモーヌ・ヴェイユの他の著書を読むにあたり必読であろうと思い読了した。 ヴェイユの人生において大きな意味を持つ工場での労働経験をまとめた「工場日記」に加え、そこから労働のあり方、そして労働階級にある人々の「悲惨」。 更にはキリスト教がもたらす意味まで書き記した1冊2024/03/03
デンプシー
1
彼女の労働観には成る程、と思わされる。疎外に対する考えはマルクスと大分近い(細かい違いはわからない)と思うが、彼女は革命のような社会的変革の限界を認識しており、興味深い。一方で「詩」(「恩寵」、神的なもの)を通じて美を労働に取り戻させるというのは、ピンとこなかった。これは、自分の宗教的バックグラウンドの欠乏にもよると思う。『重力と恩寵』にも興味が湧いてきた(読んでわかるのか甚だ疑問だが…)。2023/10/06