内容説明
一九四五年三月十日の東京大空襲で、十二歳の敏子は母と二人の妹を失った。焼け跡には、敏子の家にあったガラスのうさぎが、変わりはてた姿でころがっていた。うさぎは、燃えさかる炎に身を焼かれながらも、戦争の悲惨さを見つめ続けていたのだった…。戦争の中を生きぬいた著者が、平和への祈りをこめて少女時代の体験をつづった感動のノンフィクション。戦時用語など語句の解説を増やした待望の新版。小学校高学年・中学校向き。
著者等紹介
高木敏子[タカギトシコ]
1932年、東京都本所区(現在の墨田区)に生まれる。文化学院卒業。処女作『ガラスのうさぎ』で、1978年に厚生省児童福祉文化奨励賞、1979年に日本ジャーナリスト会議奨励賞を受賞
武部本一郎[タケベモトイチロウ]
1914年、大阪に生まれる。少年時代から画家を志し、戦後は上京して絵本や児童書を中心に幅広く活躍。1980年没
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感想・レビュー
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Shoji
43
主人公である敏子の両親と2人の妹は太平洋戦争で無残に命を奪われました。母と妹は東京大空襲で、父は機銃掃射を被弾し命を奪われました。時に敏子が12歳の頃の体験談が綴られたノンフィクションです。読了後は絶句しました。ため息か深呼吸か分からない大きな息を一つしただけです。何の罪もない民間人の命を奪う行為が国と国との外交の手段して繰り広げられました。深く反省せねばなりません。今、憲法改正の議論がなされていますが、真に平和で幸福となり得る慎重な議論を先生方にはお願いしたい。平和ボケの私は考えさせられました。2021/02/04
茉莉花
27
大分昔に読んだ本だけど読了したのが今日が初めて。東京大空襲で母と妹を失い、家の焼け跡から変形したガラスのうさぎを見つける敏子。あんなに冷たく硬いガラスがこんなに溶けるとは如何に空襲が恐ろしく激しかったかを思い知らされる。戦争で、家族を失い、アメリカ兵に仇討ちをすると思っていたのに人懐っこい笑顔で子供たちにお菓子をあげているアメリカ兵を見て爆弾を落とし、東京を焼け野原にした酷いアメリカ兵とは同一とは思えず当惑する。人種が違っても本当は皆優しいんだ、だけど国を護るため戦争をした。平和の大切さを改めて感じました2015/09/27
糜竺(びじく)
19
戦中、戦後の大変さが非常によく伝わってきた。2024/07/10
マツユキ
18
有名作品ですが、未読でした。当時十二歳だった作者の体験談です。疎開中に、東京大空襲で、母と妹が行方不明に。父と無事、再会するが…。当然なんですが、戦争中でも、届け出が色々あって、大変。まだ子供の身で…。父親が工場経営者で、恵まれた人間関係ですが、辛いものは辛い。学校へ行って学べないのが、切ない。タイトルのガラスのうさぎは、ほとんど、登場しなかったり、想像していた作品と違いましたが、当時を知る良い読書になりました。解説は偶然にも読み終わったばかりの早乙女勝元さん。『火の瞳』も読みたいと思います。2022/03/31
三平
16
太平洋戦争末期、小学6年生だった女性の体験記。疎開中、母と妹を空襲で失い、悲しみを乗り越え、父と再び一緒に暮らすことになったその日、旅立つ駅のホームで機銃掃射で父さえも失う。兄たちが出征している中、ひとりぼっちになってしまった彼女がどうやって終戦の混乱期を生き抜いたかを記している。人の温かさに励まされ、人の冷たさに翻弄されながら健気に自分を奮い立たせる少女に感動した。12歳の自分に同じことができるか考えたらまず無理だろう。2015/08/23
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