内容説明
自宅を訪問する男を相手かまわず妻ロベルトに近づかせ、不倫の関係を結ばせて客人のもてなしに供する“歓待の掟”に魅せられた夫オクターヴ。原罪と自己超越を追求する行為の果てには何が待っているのか。一九五四年に発表され、今なおその衝撃的な内容に論議が尽きない哲学小説、待望の文庫化。
著者等紹介
クロソウスキー,ピエール[クロソウスキー,ピエール][Klossowski,Pierre]
1905‐2001年。フランスの作家、思想家、画家
若林真[ワカバヤシシン]
1929‐2000年。新潟県生まれ。慶應義塾大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kentaro mori
2
ブニュエルかパゾリーニに映画化してほしい。●『目は色欲の火に燃え、耳はよこしまな談話のためにひらかれ、舌は中傷的な言葉を弄するためにあり、口は暴飲暴食を切望し、男根は過度の淫乱のためにあり、手は窃盗にささげられ、足は罪におもむくためにある』2023/08/09
みほ
2
退屈すぎる。2014/09/12
よく読む
1
坂口氏にすすめられ。オクターヴは自分の妻ロベルトを客に差し出す。合理的なカルヴァン教徒である妻に現在を植え付けようとする。矛盾したようだが、恩寵の力を見るため、敢えて罪を犯すという企みだ。夫の意図はかなわず、女は合理性によって罪悪感を克服し、むしろ快感を抱くようになる。女は、夫の視線が邪魔で、夫を殺すも、死後も夫の視線を感じてしまう。これは、妻が神に見られていると感じたことになり、男の企ては果たされた。巻末の解説を読むまでは、ちんぷんかんぷんだった。2015/10/19
どんぐり
1
神を信じるキリスト教社会で生きる人にとっては、この小説は毒をもったものになるのかも知れない。無宗教な僕にとって、ロベルトの妄想(?)の世界は奇異に思えるだけで、エロティシズムはさほど感じないのである。マルキドサド、バタイユの系譜なのだろうが、この手の本は読むことの努力に対して、読後感がプラスとして残らないので疲弊してしまう。2011/09/26
Yuki
0
矛盾を超克することに心血を注ぐ神学徒。本質(=作者)の死が訪れる着想を、彼は絵画の読解から得ることで、人間にも死(=実体性・疎通不可能性)が訪れると信じてやまない。彼の思想は、彼岸(=観念)に渡り、此岸の倫理は通用しない。/「ナント~」の試みは、逆張りの展開を見せる。案ずるにオクターヴの差し向けた「天使」は我々読者か。2017/04/15