出版社内容情報
妹ジュスティーヌとともにパンテモンの修道院で育ったジュリエットは、悪の道へと染まってゆく。悪の化身ジュリエットの生涯に託して悪徳と性の幻想がくり広げられる暗黒の思想家サドの傑作長篇小説!
内容説明
妹ジュスティーヌとともにパンテモンの修道院で育ったジュリエットは、悪徳の快楽をおぼえ、悪の道へと染まってゆく。パリで同好のさまざまな人物と交わり、イタリアへと逃げおちた彼女は、背徳の行為をくり返し、パリへと帰る…。悪の化身ジュリエットの生涯に託してくり広げられる悪徳と性の幻想はここに極限をきわめ、暗黒の思想家サドの最も危険な書物として知られる傑作幻想綺譚。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
46
フィレンツェ、ローマ、ナポリとイタリア各地を巡り、25歳のジュリエットは「罪の焔が淫欲に燃えつく」ことを説いて、自らもそれを追求しつづける。特に愉しめる場面は、ジュリエットたちと、去勢男、半陰陽、一寸法師、老婆と孫、七面鳥、猿、大型犬、牝山羊が入り乱れる大饗宴で、「こうして残ったのは去勢男と半陰陽だけでした」と結ばれるまでの乱痴気騒ぎときたら、シュルレアリスム顔負けの超現実ぶりで実に可笑しかった。ジュリエットが法王の前で啖呵を切って意気投合するも場面もなかなか興味深いが、ピオ6世は実在の人物なので驚いた。2013/11/10
みや
30
ジュリエットが世界を旅することで上巻以上に悪行の規模が大きくなった。ヴェスヴィオ火山での殺人は迫力満点。妹の最期も良い。ローマ法王やロシアの女帝も淫猥で残酷な悪人として描かれており、著者がナポレオン・ボナパルトに逮捕されたのは卑猥さだけでなく、政治的な背景もありそう。『悪行をすることで快楽を得るのではなく、悪行をすることが快楽』など、悪徳の道は今回も奥深い。大抵の悪人がドSとドMを両立させていて、非常に活動的。努力無くして快楽は無し。自分に正直に生きることこそが楽しい人生と成る唯一の道だと改めて確信した。2020/03/01
バズリクソンズ
24
サディズムの語源になるほどこの作家の目眩を覚える程の惨虐、強奪、拷問、強姦の内容は読み進める度にこちらが危害を加えられている様な錯覚に陥る程に徹底されている。そこには良心など微塵も存在せず、あるとすれば後のジュリエット自身の作戦を成功させる為の擬装である。各登場人物の長い講釈も自分を正当化する言い訳にしか聞こえず、殺戮と性欲を満たすために繰り返される権力行使は読んでいて人間性の崩壊を招く危険性を孕んだ物語。しかし歴史を遡ればフランスだけでなく、この様な惨たらしい時代を経て現代が構築された事実を学び知れる。2025/03/22
うさ丸
22
★★☆☆☆ 訳者の澁澤氏もあとがきで書かれているが、上巻終わりから下巻はジュリエットの悪徳武者修行冒険物語的になっているので、18世紀に書かれた作品の中では読みやすい部類に入ると思います。 しかし、サドはこの作品を執筆中、どのような精神状態で書いたのか? 半ば精神錯乱状態だったのかそれとも冷静沈着に書いたものなのか… 小説を読んだと言うより一人の作者の心理状態の有りように考えさせられた作品であった。2018/02/18
taku
19
最強のゲスヒロインへと成長を遂げるジュリエットちゃん。えげつねえ連中と陵辱される連中しか出てこないってどんだけ~!アブノーマルで暴力的な淫縦の繰り返しでだれるぅ~。これで抄訳って原著はいかほど~。悪人が悪人の正しさを語っているのはうけるぅ~。強者が弱者を蹂躙する弱肉強食の法則に人間も従うのが自然で幸せという論理。背負い投げ~!美徳は踏みにじられ悪徳が華開く。ゲス仲間によるゲスパイラル容赦なし。おごと~。サディズムが貫かれた世界はサドの見た夢か。まぼろし~!2018/07/26