出版社内容情報
スラヴ地方を中心に古くから広範に伝わる、よみがえる死者の伝説は、ワラキアの「串刺し公」ヴラド三世(1431?‾76)と融合され、ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』(1897)となった。その後、さまざまな分野での追随作品は数かぎりなく、吸血鬼たちは時代につれ、あまりに馴染み深すぎる存在になっていった。だがそれでも、かれらがもたらす恐怖と蠱惑は、今も潜んでいる――そう、私たちのすぐそばに。
今夜は出かけてみませんか。ひさしぶりに昔の友に--恐るべき、しかし愛すべき、夜の貴族たちに会うために。
内容説明
「漆黒のマントの陰に」「闇夜の血族」「深紅の饗宴」「黄昏時の隣人たち」の四部構成。資料・海外吸血鬼小説リスト。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アナーキー靴下
59
吸血鬼ものアンソロジー本だが、収録小説いずれも個性的で、エッセイや評論、更には海外吸血鬼小説リストと盛り沢山の充実ぶり。ウールリッチの「破滅を誘う唇」は夜の孤独な美しさに惹かれる心象風景の投影のようなところが良かった。昔観た『ニア・ダーク』という吸血鬼もの映画の序盤もそんな雰囲気と記憶しているが、絶対的な美しさではなく、惹かれる心が見せる美しさ、そういう吸血鬼が好きだ。ところでキングとアン・ライスの作品が生まれるまで吸血鬼ものは追随され戯画化された、とあるけれど、そこが吸血鬼像の完成形ということだろうか。2023/07/19
kasim
29
一応雑誌の体裁なのだろうか。新旧の小説やエッセイはどれも読み応えがあって大満足。A・トルストイの「吸血鬼の家族」やウールリッチ唯一の吸血鬼ものは、女吸血鬼に襲われる男性主人公に実は性的加害者の側面があることを示唆していてさすが。「ルエラ・ミラー」は文字通りの吸血鬼ではなく、本人に自覚のないまま周囲を破滅させる女性の話でホラーというより「奇妙な味」が面白い。これをさらに洗練させるとD・H・ロレンスの「妖しい婦人」に。はじめて読んだモダンホラーのレアード・バロンもすごくよく、もっと翻訳が出てほしい。2023/06/29
timeturner
8
吸血鬼物は苦手なんだけど、シチュエーションがいろいろで工夫があるので気が紛れ、楽しく読めた。吸血鬼と言っても色々な種類があるものだなあ。考えてみれば人間関係なんていつだって「吸うか吸われるか」だものね。リーダーシップへの深い関心を作品中で示すことの多いD・H・ロレンスの吸血鬼物なんてのも収録されていて大いに納得。2021/01/11
5〇5
7
~吸血鬼の系譜「小倉百人一首」調で~ 血早降る 神をも効かず 断った皮 顔紅に 瑞(みず)くくるとは2021/07/06
Mari
1
吸血鬼ものはこれまであまり読んでこなかったのだけど、某ゲームに登場する吸血鬼のお嬢様がとても好きで、理解を深めたくて読んだ。どの短編も面白かった!2022/05/06