内容説明
「大阪」を書くことで、いま街の中で生きる自分の人生を書く―九〇年代から二〇一〇年代に至るまでの時代と人の呼吸を活写した、「大阪へ来た人」と「大阪を出た人」による初共著エッセイ。かつていた場所と、いまいる場所が「私」を通して交差する。文庫化にあたり書きおろし収録。
目次
地元を想像する
港へたどり着いた人たちの街で
淀川の自由
商店街育ち
再開発とガールズバー
環状線はオレンジ、バスは緑、それから自転車
あそこらへん、あれやろ
大阪の友だち
1995
大阪と大阪、東京とそれ以外
散歩は終わらない
わたしがいた街で
文庫書きおろし(トニーのこと;わたしのいる場所)
著者等紹介
岸政彦[キシマサヒコ]
1967年生まれ、社会学者。2016年『断片的なものの社会学』で紀伊國屋じんぶん大賞2016、21年『リリアン』で第38回織田作之助賞、22年、編著書『東京の生活史』で第76回毎日出版文化賞企画部門と紀伊國屋じんぶん大賞2022大賞を受賞
柴崎友香[シバサキトモカ]
1973年大阪生まれ。作家。2000年『きょうのできごと』でデビュー。07年『その街の今は』で第57回芸術選奨文部科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、10年『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞、14年『春の庭』で第151回芥川賞、24年『続きと始まり』で第74回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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阿部義彦
24
少し前の河出文庫新刊、どちらの著者の本も馴染みで、この本も評価が高かったので遅ればせながら、まずお二人の文章の密度の高さには驚きました、大阪に偏在した過去のあれこれそして、場所としての大阪そこに生きる人をさりげなくだが、濃密に描き出してくれます。飼っていた猫、嫌いや受けた面接、商店街、災害、飲み友達、コンサート、お二人とも文化人類学、人文地理学に造詣が深いだけに素敵なコラボとなりました。表紙のイラストも素晴らしいですがその見返しでカバーイラスト◎名久井直子、カバーデザイン◎小川雅章は逆だと思う。校正ミス2024/05/11
'75s'85s
11
通勤電車で一ヶ月かけて読みました。ちょうど今、20年ぶりくらいに大阪に戻ってきてて、かなりローカルな感じが共感できて面白かったです。90年代後半のアメリカ村とか淀川河川敷とか。自分が一番いい思い出なのは、90年代になる直前のアメリカ村で買ったマリリン・モンローのカッターシャツです、、、その頃って映画の「ブラック・レイン のロケもあったみたいだし、、、なんか賑やかでした。この本は、面白く読んで、最後の文庫版描き下ろしの2篇で、少し霊感的に感動する場面が両方ともありました。割とお二人の間くらいの世代です。2024/06/28
シンプルねこ
10
私は大阪に住んだことはない。でも、お二方が交互にエッセイを綴っていくのを読んでいくうちに、人は住んでいる街に影響を受けて、街と共に生きていくんだなと思った。大阪の思い出を語っているようでいて、お二方の人生が垣間見えてきて面白いエッセイだった。2024/04/26
わ!
9
タイトルが大阪なので、単行本の時から気にはなっていたのですが、内容があくまでエッセイということで、購入せずにいました。それが文庫化されたと言うことで、早速読んでみたわけです。先にも書いた様にエッセイです。社会学者の先生と、女性の小説家によるエッセイ集です。二人とも自分が若い頃に過ごした大阪での出来事を書いています。読んで笑えるエッセイと言うよりは、ほろ苦い青春時代のエピソードが多く、その事象に対して、大阪と言う場所がどの様に影響を与えたかが書かれていて興味深く、一味違った第三者目線の大阪が読み取れます。2024/04/28
鷹ぼん
8
岸政彦と柴崎友香による共著エッセイ。岸政彦の書く大阪は「俺の知ってる大阪とは、なんか違う…」ってのを終始感じつつも、逆発見のようなものも。特に『あそこらへん、あれやろ』。これ以上、説明のしようがないフレーズ。もっとも「あれ」は最近は、晴れがましい意味で多用されてるけど(笑)。柴崎友香が生まれ育った大阪市は、俺が生まれ育った大阪市とは全く違う風景、まるで異世界。とは言え「集団の記憶」とも言うべき共通項が多く「気が合うやん」と肩の一つもたたきたくなる。一つの都市を街を土地を、複眼的に見る面白さが詰まった一冊。2024/05/30