出版社内容情報
三島由紀夫の数ある短編の中から選び抜かれた、最もミステリアスな傑作12篇。『文豪ミステリ傑作選 三島由紀夫集』を改題復刊。
内容説明
なぜ人は罪を犯すのか?そしてなぜ人は人を殺すのか?嫉妬、陰謀、毒薬、怨念、殺意、裏切り、近親相姦、ある中年夫婦の秘事…。誰もが密かに抱える心の闇を、美しく背徳的にえぐり抜いた短篇12話。三島のエッセンスを凝縮した、謎が謎を呼ぶミステリアスで奇妙な物語。
著者等紹介
三島由紀夫[ミシマユキオ]
1925年、東京生まれ。本名、平岡公威(きみたけ)。16歳で「花ざかり」を発表し、天稟を注目される。1947年東大法学部を卒業後、大蔵省に勤務した後、執筆生活に入る。1949年、『仮面の告白』を刊行、作家としての地位を確立。主な著書に、1954年『潮騒』(新潮社文学賞)、1956年『金閣寺』(読売文学賞)、1965年『サド侯爵夫人』(芸術祭賞)等。1970年11月25日、『豊饒の海』第四巻「天人五衰」の最終回原稿を書き上げた後、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
69
倫理の慮外で戯れながらも豪奢で残酷で純朴な心理を物語として描けるならミステリが一等、似つかわしい。それを形にしたのが三島由紀夫である。まずは「サーカス」の永遠の若さへの妬心と羨望、そして解放に捧げられたような供物としての死に陶酔としてしまう。「毒薬の社会的効用について」は、死にたがりを生きやすくするという逆説が付随する皮肉があるからこそ、毒という存在の絶対性が際立つのだ。「果実」は「男は不潔」と思うも赤ちゃんは絶対、欲しい二人の恋人たちが現在となっては現実味を帯びている。しかし、赤ちゃんへの可愛がり方は2022/07/17
桜もち 太郎
17
三島由紀夫のミステリアスで奇妙な物語。12作品が収録されているが、どの作品にも「殺す」ことが含まれている。良かったのは「復讐」「水音」「 月澹荘綺譚 」だ。そして自分的に最高だったのは「朝の純愛」。熟年の夫婦が知り合ったときと同じように、ある朝、新鮮で純愛的接吻をし、体を重ねるところから物語は始まる。「全力をあげてこの腐敗と分解作用に抵抗しようとしたのである」、新鮮な朝を迎えるために夫婦がとった行動とは、まさに現代のAVのような感じがした。たまらない。そして最後にやはり夫婦は殺されてしまう。→2023/07/24
Inzaghico (Etsuko Oshita)
10
新しいもので昭和40年の執筆だ。「朝の純愛」は、50歳と45歳の夫婦が若者をだしにする話なのだが、最後は三島の美意識に貫かれた終わり方だな、としみじみ思う。何もしない高等遊民の夫婦で、お互いしか見えていなければ、こういう生(と性)もまたよし、なのかもしれない。2022/07/25
黒い森会長
5
「文豪ミステリ傑作選三島由紀夫集」1998年刊を改題、2022年5月新装版。「サーカス「毒薬の社会的効用について「果実「美神「花火「博覧会「復讐「水音「月澹荘奇譚「孔雀「朝の純愛「中世に於ける一殺人常習者の遺せる哲学的日記の抜粋 の12作。殺人と犯罪の物語集。三島らしい技巧と観念の物語。2022/10/17
賢一
5
月荘綺譚 美しく流麗な文体。世界観に惹き込まれ 落ちも良かった 三島の考える美についてもっと作品を通して知りたいと思った。2022/07/16