出版社内容情報
幻想、ミステリ、都市小説…とユニークな作風で異彩を放った作家の傑作決定版。「東天紅」「ひこばえ」「泥汽車」など全13篇。
【著者紹介】
1908ー1991 作家、翻訳家、料理研究家。幻想小説、ミステリなど、異色の作風で知られる。「狐の鶏」で日本探偵作家クラブ賞、『泥汽車』で泉鏡花文学賞。
内容説明
折口信夫、乱歩も絶賛した「かむなぎうた」、ほの暗く、ほの明るい幻想怪奇「東天紅」、民俗的ミステリ風味「吉備津の釜」、得意の台湾物「消えた家」、呪いの家「ひこばえ」、泉鏡花賞「泥汽車」、ハイカラ右京番外篇「明治吸血鬼」…澁澤龍彦も種村季弘も賛美した異端のダンディズム作家の、傑作全十三篇。
著者等紹介
日影丈吉[ヒカゲジョウキチ]
1908年、東京生まれ。作家。アテネ・フランセ卒。フランス語教師、フランス料理の研究指導などを経て、戦後、推理小説を執筆、『宝石』誌の懸賞に入選した『かむなぎうた』でデビュー。『狐の鶏』で日本探偵作家クラブ賞、『泥汽車』で泉鏡花文学賞受賞。1991年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はっせー
65
不思議な小説が読みたい人におすすめの本になっている!読書友達からいただいた本。いやー読み終わって思うことはノスタルジックだけどどこかミステリアな雰囲気がある文体と内容だなってことだった。ここで出てくる短編や中編もどのジャンルで分けるかがわからない。強いて言うなら日影丈吉というジャンルだろう。また読みたくなるような本であった!2023/11/11
HANA
55
全集全て既読の為収録作全て再読であったが、「かむなぎうた」「吉備津の釜」「泥汽車」が入っているだけでもう大満足。特に「かむなぎうた」と「泥汽車」は自分の拙い読書歴の中でも未だにベストに入っている。その為両者ともほぼ細部まで覚えているが、やはり読むたびに新しい感動を与えられる。「泥汽車」の最後の一行など、何度読んでも身震いがするほど。欲を言えばSFより台湾ものをもっと入れてもらいたかったけど、著者の範囲の広さを示したかったのかなあ。端正な文章で綴られる郷愁や不安を、久しぶりに思う存分堪能することが出来た。2015/10/10
藤月はな(灯れ松明の火)
40
『オペラ座の怪人』(早川書房)の翻訳だけでなく、幻想怪奇小説、ミステリー、時代物、SF、バイオレンスなど、昭和の幅広いジャンルの小説を書けたからこそ、逆に認知度が低くなり、国書刊行会の全集か絶版本しか読めなかった日影丈吉氏の短編集が出版できる時代になって本当に良かった・・・ヽ(;▽;)ノ「東天紅」や「吉備津の釜」の人間の哀しき悍ましさに対し、「食人鬼」の戦争犯罪による良心の呵責に対し、未来への楔を解き放つ仕掛けに安堵で一息つけます。そしてハイカラ探偵右京シリーズも入っているのが個人的に嬉しいです^^2015/12/21
いたろう
40
1949年の処女作「かなむぎうた」から、亡くなる2年前、1989年の「泥汽車」まで、13編の短編集。作家デビューは戦後だが、その時点で40代、戦前からの探偵小説作家たち、―ミステリというより怪奇趣味、幻想文学的な― と同じ匂いを感じる。そして、それに留まらない幅の広さが、1950年代に書かれた月を舞台にしたSFまで入っていることからうかがえる。日影作品は、文庫本で何冊か所蔵しているが、そのすべてが今では絶版になっているよう。その意味で、今、この短編集が文庫で編まれた意義は大きい。2015/12/19
geshi
30
全作品がノスタルジックで言い知れない恐ろしさを抱えている。詳細な文章によって浮かび上がる情景は、誰もが幼い頃抱いた事のある幻想的なもの。一番好きなのは『吉備津の釜』郷愁を誘う思い出が現在へと翻って警鐘を鳴らす見事な構成。幻想と現実とが境界無しに繋がってしまう不思議な小説体験。『食人鬼』は真実をはっきりさせず疑惑を募らせる語り口が生む反転のカタルシス。『人形つかい』は丁寧に積み重ねられた情景の末にあるラストに戦慄。2016/02/29