内容説明
津軽の十三歳は悲しい―うつりゆく東北の四季の中に、幼い生の苦しみをみずみずしく刻む名作「木橋」、横浜港での沖仲仕としての日々を回想した「土堤」、および「なぜか、アバシリ」を収録。作家・永山の誕生を告げる第一作品集。
著者等紹介
永山則夫[ナガヤマノリオ]
1949年、北海道生まれ。青森の中学校卒業後、上京。店員、自動車塗装工、日雇労働者等を経て、68年、四件の連続射殺事件を起こし、69年逮捕。90年死刑確定、97年執行。83年、「木橋」で新日本文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Take@磨穿鉄靴
37
永山氏。4人の命を奪った死刑囚の作品。自伝。行った行為は身勝手で決して許される事ではないが生い立ちを読むにつれて同情はした。幼少期の虐待や教育の放棄(彼は学ぶ機会を何度も与えられているけど自分でそれを放棄している。)がこのような人間を形成するのかと愛情と教育の大切さを感じた。小説自体は丁寧に書いているのだろうけど稚拙な(特に序盤)印象が残った。著者の経歴から話題性で売るから編集者も作品そのものの質には拘らなかったのかな。この本は作者込みで完結。作品としてなら★★☆☆☆2023/01/09
ケイティ
23
ずっと読みたかった永山氏の文章は、粗削りながらも自身の半生をお焚き上げするような落ち着きもある。幼少期から兄からのリンチが続き親にも虐げられ、友人にも恵まれない。そんな生い立ちからか、真っ当な生き方や人間関係を築けず、短絡的な判断と偏見に満ちていく。同じ境遇でも立派に生きている人もいるという声も一理あるが、本人なりに耐え抜いた中でつらいものは、100%つらい。それと罪を赦すことはイコールではないが、相対的に減るものではない。こうして獄中で振り返ると分岐点は無数にあったと誰より本人が気づいているように思う。2025/09/10
おにぎりの具が鮑でゴメンナサイ
18
4件もの強盗殺人を犯した死刑囚が作者である。その事実を知らずに読む人は皆無であろうし、知らずに読んではあまりにも意味がない。小説として表現が優れているということはなく、語られる物語も自己憐憫による美化と弁解に聞こえなくもない。しかし彼が彼を擁護しようとする企図を越えて、ときに制御を失って横溢する哀しさと悔しさに荒んだ文章が、見捨てられた子の貧困と不遇により削られた醜いささくれとなって心に突き刺さった。それにより一級の価値がある本になったと思う。彼を極悪人に育ててしまった社会に罪はないのかと自問する。2014/05/28
なる
17
『木橋』は限りなく永山本人をモデルとしたN少年の幼少期を中心に描く。根は真面目だけれど境遇が彼を変質させたのだろうというのが、感情表現に不器用な文章から感じられる。作者の引き起こした犯罪を考えても露骨に感情移入はできないまでも漫画本のエピソードなど共感できそうなものが時折ある。終盤の木橋のくだりは圧巻。幼少期における家族の愛がどれだけ大事なことか。併録の『土堤』は多摩川の土手。川崎駅周辺の雰囲気は今も健在する。登場するプレス工場は地元民ならピンとくる。2019年の台風被害が甚大だった筈。2020/05/28
ふみふむ
15
刑罰の是非は別にして、剥き出しの貧困や虐待、育児放棄は読んでいて胸が締め付けられた。今なお、そうした社会的な問題は解決されていない。2010/12/13
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