河出文庫
自動巻時計の一日

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 233p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784309407180
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

「どんなに、おれのまわりを見まわしても、見なれたものばかりだ」。米軍基地の化学研究所に勤める男が、朝起きてから夜寝るまでのことを書き出してみようと思い立つ。家での朝食、通勤風景、米兵たちとのやりとり、時間を盗んで翻訳している小説…何のへんてつもない日常の出来事が一体となって、類例のない小説が誕生した。

著者等紹介

田中小実昌[タナカコミマサ]
1925年、東京・渋谷生まれ。東京大学文学部哲学科中退。軽演劇、バーテンダー、将校クラブの雑役、香具師などの職を転々とした後、翻訳、文筆業へ進む。1979年、第八一回直木賞と第一五回谷崎潤一郎賞を受賞。2000年、ロサンジェルスにて客死
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

miori

14
作者本人は「ホッとしたみたいな気分で書いたので、もちろんだらけたものにしかならない」と、この作品について語っています。だらけているかどうかは、わかりませんが、こんな小説もありだなあ、と感心しました。書きあがった作品をすぐに小島信夫が読んでくれて、そのあとお酒を飲みにいったそうです。小島信夫がこの作品をどう評したのか知りたいものです。2022/10/12

すーぱーじゅげむ

10
「なまけ者ばっかりだったら、戦争もおこらない。戦争って、しんどいものだからさ。人類の永遠の平和をねがうならば、みんな、すべからく、なまけ者になるべきだ」勤務時間中に仕事をすると損をしている気分になる、マイペースおじさんの一日です。びびりで何もできない自分を「なさけない」と嘆きつつ、改善する気は全くない、のんびりした感じが癒されました。彼に渡り合うカカアも勇ましいです。作中で主人公が翻訳をしているのですが、「なめなめ野郎」とかのスラングの訳がすごく可愛いと思いました。2023/08/16

駄目男

7
「もう、だいぶ前から、おれは、一日のことを、書いてみようとおもっていた」と言っているが、これで面白い小説になっているのかどうかよく分からない。朝食を食べながら女房との遣り取りまでは面白かったが、仕事に行ってからがどうも退屈な感想になってしまう。職場では液体物質を混合して特定の化学的反応を生じさせるようなことをしているらしいが、その合間に翻訳をしているわけだ。つまり、私が職場で機械を回しながら、暇を見てパソコンでブログを書いている。その一日をブログ記事も併せて小説仕立てにして読者に読ませようという訳だ。2019/02/06

tomomi_a

4
今冬のD坂で出会った本。世界に働きかけるのではなく、みる、ただみる、自分に関わらないことを無責任にみる、想像する、とか、大人がしない方がいいっぽいことがたっぷり。毎日毎日、同じようなことを繰り返すうちの、たった一日のこと。でも全然、センチメンタルじゃないのは無責任だから。悪い意味じゃなく。 自分が何についても関係しているという喧しさに比べて、とっても親しみが持てる無責任と無関心と小ささと弱さだった。2015/04/12

放蕩息子

3
作者は特権階級ではなく、一人のキャラクターとして登場し、同じ小説世界の地平線の中で生活を送る。そこにはいわゆる自然主義的な緊張感を欠いた自己ではなく、生活に追われる一人の普通のおじさんがいる。近代小説の中で重要な作品のひとつと思われる作品

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/26777
  • ご注意事項

最近チェックした商品