出版社内容情報
中井久夫とは誰なのか。幼時から親しいふたりが稀有なる精神科医の核心にせまる入門と、中井自身の言葉によってその全貌をつたえる。
村澤 真保呂[ムラサワ マホロ]
著・文・その他
村澤 和多里[ムラサワワタリ]
著・文・その他
内容説明
原点であるウィルス研究をもとにした「生命」へのまなざしに精神科医としての核心をみすえ、幼時から親しかった二人が稀有なる対話をもとに、つねにあたらしい中井久夫の軌跡とその思想と治療の本質にせまる。
目次
第1部 中井久夫との対話
第2部 中井久夫の思想(「精神科医」の誕生;「寛解過程論」とは何か;中井久夫の治療観;結核とウィルス学;サリヴァンと「自己システム」;ミクロコスモスとしての精神;生命、こころ、世界―現代的意義について)
中井さんと私たち―あとがきに代えて
著者等紹介
村澤真保呂[ムラサワマホロ]
1968年生まれ。現在、龍谷大学社会学部教授
村澤和多里[ムラサワワタリ]
1970年生まれ。臨床心理士。現在、札幌学院大学人文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ネギっ子gen
51
【患者さんの心の中にひとしずくの水を見つけ――】物心ついた時分から「中井久夫」の名前を聞かされて育った、社会思想史と臨床心理学の二人の研究者が、中井氏と対話を重ねる中で、氏の歩んできた軌跡とその思想や治療の本質に迫った書。2018年刊。<ウイルス学に基本的な発想をもつ中井氏の精神医学的考察は、言語や記号に依拠する精神医学とは異なり、根本的に生命論的ないし生態学的な視座に基づいており、したがってその視座から中井氏が編み出した独自の思考は、近代思想の射程を超えて、新しい時代の思想的枠組みを提示するもの>と。⇒2025/02/14
禿童子
20
中井久夫の親友の子供たちが大きくなって臨床心理学者になり、精神医学以外の中井久夫の思想世界を発掘する。中井本人との対談が冒頭にあるが、1960年代の精神医学界を吹き荒れた嵐という背景を理解することができたのは有益だった。サリヴァンの自己システムは初めて知ったが、それを翻訳・紹介したのが中井という多彩な面の紹介もあり、「微分世界」「積分世界」「比例世界」という統合失調症患者の精神的世界を人類のマクロの精神史になぞらえる自然哲学者として中井久夫をとらえ直す見方も興味深い。深山幽谷を歩む感じ。奥が深い。2018/10/12
ポカホンタス
6
著者は中井久夫の学生時代からの親友の息子さんたち。中井とのインタビューとともに、中井の残した多方面にわたる業績の全容を視野に含めた大胆な全体像の提示がなされている。中井の寛解過程論や治療観、サリヴァンなどのテーマを丁寧にわかりやすく解説されるとともに、中井の思想を現代思想の潮流の中に位置付ける試みもなされる。本格的な中井研究の魁として重要な著作だと思う。2018/10/18
kentaro mori
5
それなりに中井久夫の本は読んできたが、その思想の基にウィルス学があったことは知らなかった。寛解過程論などの理論も簡潔にまとめてある。また、木村敏との思想上の近さ(木村=哲学、中井=臨床)も改めて感じた。2019/07/29
なおこっか
3
お父様が中井先生とご学友故に近しく接してきたという、大変羨ましいご兄弟による本。中井先生の著書と、直接語られた言葉を紐解きながら、特に先生の初期研究対象であったウイルス学と、精神医学に転じてからの寛解過程論を結びつけた所が本書の白眉。治りかけに無理しちゃ(させちゃ)いけない理由がすっと腹落ちする。病になる前、緊張状態の「元」に戻らなくてよいのだ。本書は神保町にある鹿島茂プロデュースのシェア書店Passageで出逢った。ネット情報も頼りにしつつ、店頭での偶然の出逢いも嬉しいもの。2024/01/22