内容説明
毎日同じことを繰り返しながら、刻一刻と変化していく、子どもとの時間と記憶。二歳のももちゃんとお父さんは日々、川べりを歩く。かけがえない瞬間を描く、新世代の「父」小説。
著者等紹介
滝口悠生[タキグチユウショウ]
1982年、東京都生まれ。2011年、「楽器」で新潮新人賞を受賞し、デビュー。15年『愛と人生』で野間文芸新人賞、16年「死んでいない者」で芥川賞、22年『水平線』で織田作之助賞、23年に同作で芸術選奨文部科学大臣賞、23年「反対方向行き」で川端康成文学賞をそれぞれ受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さちこ
32
今の自分にはあわなかった。2025/06/03
niisun
31
男性目線での育児の話がひたすら続く小説として思い浮かぶのは、堀江敏幸さんの『なずな』。堀江さん同様、芥川賞作家である滝口悠生さんが描く保育小説(そんなジャンルがあるのかわかりませんが)もなんとなく佇まいが似ている気がします。日々繰り返される保育園の送り迎えや公園での些細な出来事が、園児のももちゃんのパパの視点や思索を軸に綴られています。未就学児の育児から距離が近い人には共感度の高い話。ただ、語り手や話の切り替えが曖昧で、切れ目なく続いていく滝口さんの独特な文体はなかなか疲れました。短編集で良かった(笑)2025/06/19
タピオカ
23
保育園の送り迎えをしながら、娘のももちゃんや、周りの子たちを温かい眼差しで観察・記録した本とでも言えばいいかな。日常の何気ないしあわせに気付かされるような本だった。ただ、難しい言葉は一切使ってないのに、文体に違和感を感じてしまい、そこが最後まで馴染めなかった。特に「とももの父親は…」というフレーズが多々出てきて、その度に何か集中力が途切れるてしまい、やっとで読了したという感じです。芥川賞作家さんと聞いて、驚くような、納得するような感じでした。2025/07/10
檸檬の木
17
保育園に通う「ももちゃん」の送り迎えは文筆業である父親が分担している。娘以外の子供たちやその親たち、保育士、途中の道で知り合った大人たちとの触れ合いがどれも微笑ましくてほっこりした気持ちになる。かつては保育士になる夢もあり子供の観察眼はきめ細かく連絡帳の文面がついつい長文になってしまう。送り迎えの時にしか他の子どもの親や家族とは会わないが、毎日の繰り返しの中で自分の子どもを含めた子どもたちを見続けているという経験を共有した親同士の信頼関係が形成されていく。そんな素敵な関係がとても羨ましい。2025/06/13
ベル@bell-zou
15
ついふふふと頬がゆるんでいた。ももちゃんのお父さんがももちゃんを通して語るたくさんの言葉はとても哲学的。ももちゃんのおともだちのお父さんお母さん、ももちゃんの保育園の保育士さん、ももちゃんとの散歩道で知り合う人、犬。子どもたちの自由さと奔放さの尊さ。それが次第に整っていく寂しさ。長すぎるコメントを連絡帳に送りアプリエラーにしてしまうお父さんいいなぁ。長閑な公園の空の下で厄災と戦争に思いをはせるももちゃんのお父さんのそれとは言わない祈りが胸に届くよう。微笑ましさがなんとも心地良い本だった。…守らなくちゃね。2025/07/19