内容説明
毎日同じことを繰り返しながら、刻一刻と変化していく、子どもとの時間と記憶。二歳のももちゃんとお父さんは日々、川べりを歩く。かけがえない瞬間を描く、新世代の「父」小説。
著者等紹介
滝口悠生[タキグチユウショウ]
1982年、東京都生まれ。2011年、「楽器」で新潮新人賞を受賞し、デビュー。15年『愛と人生』で野間文芸新人賞、16年「死んでいない者」で芥川賞、22年『水平線』で織田作之助賞、23年に同作で芸術選奨文部科学大臣賞、23年「反対方向行き」で川端康成文学賞をそれぞれ受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
J D
91
子ども「ももちゃん」への愛が溢れていて、親の愛の深さに敬意すら表したくなるような作品。ただ、滝口悠生さん独特の「あれ!?この文書の主語は誰!?」文体により、慣れていないと戸惑うが、慣れてしまえば楽しく読める。因みに「長い一日」でこの滝口文体に親しむ訓練!?を私は積んだ。いずれにしても「ももちゃん」への愛は作品中に何度その名前が登場するかでも伝わる。多分700から800回は出てくるのではないか。誰か数えてみてほしいな。最終章「名前」がこの作品の締めとしてすこぶる良かった。2025/09/21
pohcho
65
保育園に通うももちゃんとももちゃんのお父さんの日常。 「いつでもどこでもなにに対しても世界と一対一で関係を結ぶ」ももちゃん。今この時を生きる子どもの、かけがえのない瞬間の集積がキラキラと輝いている。どんどん成長して、すぐに忘れていってしまうのだけど、何気ない日々のなんと愛おしいことかと。けんかするももちゃんとあみちゃんの間に入るふいちゃんがめちゃ可愛かった。ももちゃんが「も」の字をお母さんにあげるところも好き。2025/08/04
竹園和明
44
2歳児ももちゃんを保育園に送るお父さんと、ももちゃんの保育園での日々などを綴った作品。文筆業であるお父さんが感じた事を、噛み砕いた文章で綴る。車ではなくのんびり歩きながらご近所さん達と会話したり、帰りは公園の芝生に寝転んだりしながらゆるく送り迎えする日常だ。お父さんはこの幼く穢れなき小さな命を守りながら、日々成長するももちゃんとの毎日を生きているんだね。それは凄く幸せなこと。そうしていつの日か、お互いに感謝し合う日が来るのです。おーい!真っ直ぐ元気に生きて行くんだよ!ももちゃん!。2025/08/11
niisun
43
男性目線での育児の話がひたすら続く小説として思い浮かぶのは、堀江敏幸さんの『なずな』。堀江さん同様、芥川賞作家である滝口悠生さんが描く保育小説(そんなジャンルがあるのかわかりませんが)もなんとなく佇まいが似ている気がします。日々繰り返される保育園の送り迎えや公園での些細な出来事が、園児のももちゃんのパパの視点や思索を軸に綴られています。未就学児の育児から距離が近い人には共感度の高い話。ただ、語り手や話の切り替えが曖昧で、切れ目なく続いていく滝口さんの独特な文体はなかなか疲れました。短編集で良かった(笑)2025/06/19
Karl Heintz Schneider
42
2歳の娘を優しく見守る自宅勤務の父親の物語。忙しい母親に代わり保育園の送り迎えをする毎日が描かれている。楽しそうな表紙絵に惹かれて手に取ったが思っていた内容とは違っていた。内容と言うより文章?説明口調が延々と続き前触れもなく視点が変わったりして混乱することしばし。悪く言えば文章にメリハリがない。文字をギュっと詰め込んだ論文を読まされているみたい。総ページ数は215と少ないものの数ページ読んだだけで、どっと疲れてしまう。初読みの作家さんだけど、いつもこうなのだろうか?だとしたらもう手に取ることはないだろう。2025/09/13