内容説明
雷のような逆毛を背負った、美しい犬。運命の相棒を裏切った、幼い私の「罪と罰」。
著者等紹介
千早茜[チハヤアカネ]
1979年生まれ。2008年『魚神』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。同作で09年に泉鏡花文学賞を受賞。13年『あとかた』で島清恋愛文学賞、21年『透明な夜の香り』で渡辺淳一文学賞、23年『しろがねの葉』で直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
332
千早 茜は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。 ジャカランダが国花だとすると、本書の舞台は、南アフリカでしょうか? 愛犬との出逢いと別離、中篇ですが、心に刺さる読み応えのある物語でした。 本書で、南部アフリカ原産のローデシアン・リッジバックという犬種を初めて知りました。 https://www.jkc.or.jp/archives/world_dogs/2454 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000714.000012754.html2024/10/05
hiace9000
174
光と陰、乾いた赤土と手入れされた庭園の緑。その強烈なコントラストはアフリカの大地に匂う荒々しい野性と歴然たる貧富格差を作中で際立たせる。今作は著者幼少期の濃密な体験を色濃く反映させたかと察する「犬小説」。“守られてきた犬を自分は守ることができなかった罪”は、まどかの傷となって今も時に雷鳴のように心を苛む。決して御しきれない野性を内包する大型犬・虎と過ごした日々は、まどかの愛着形成の原点だったのだろうか。匂い・色彩・揺れる心象風景ー千早筆の持ち味をアフリカの風土と絡め紡ぐとき、愛は乾いた雷となって迸り奔る。2024/10/04
いつでも母さん
174
あぁ、この感じは紛れもなく千早さんだなぁ。匂いとか空気感、鮮明な色彩に体温を感じる作品だった。ここまで?と思わなくはなかったけれど(飼ったことが無いからなぁ私)虎と言うガードドッグに思いを馳せるまどかの、現在と過去の対比がとても切ない。日本に暮らすだけでは分からない事が多すぎる。この国は危うい、私たちは脆いのだ。2024/09/11
とろとろ
146
幼い頃(小学校低学年)に海外(たぶんアフリカ)で暮らしていた時、番犬用の仔犬としてローデシアン・リッジバックと暮らした。その犬は「虎」と名前だった。調べてみるとライオンを狩る犬(別名ライオン・ドッグ)とある。全長70cm。体重36kg。背中に一筋の逆毛(リッジ)がある。いや〜っ、写真見るとすごいねぇ。特にこの背中のリッジがかっこいいねぇ。一目惚れだわ。おっと、読書の感想を…。当時の回顧をするという態(てい)で話は進む。犬も人間も同じ。真剣な愛が無ければ…。真摯に向き合う気持ちがなければ…。そう思うばかり。2024/12/05
シナモン
115
時として怖いくらいにむき出しになる犬の本能。犬は生きる場所も飼い主も選べない。犬を飼うということの責任、犬の幸せについて考えさせられる一冊でした。作者の子どものころの体験なども盛り込まれているのかな。父親の仕事の都合で滞在することになった国での暮らしの様子がとてもリアルでした。2025/01/21