内容説明
下着デザイナーとして一世を風靡した鴨居羊子。鬼才の画家・鴨居玲。姉弟が稀有なる才能を発揮し、活躍していくまでの野望と挫折の軌跡を、盟友・司馬遼太郎との友情を交えつつ描く渾身の書き下ろし!
著者等紹介
植松三十里[ウエマツミドリ]
1954年生まれ、静岡県出身。東京女子大学文理学部史学科卒業。出版社勤務、七年間の在米生活、建築都市デザイン事務所勤務などを経て、執筆活動に入る。2002年『桑港にて』(文庫化時に『咸臨丸、サンフランシスコにて』と改題)で歴史文学賞、09年『群青 日本海軍の礎を築いた男』で新田次郎文学賞、『彫残二人』(文庫化時に『命の版木』と改題)で中山義秀文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆみねこ
72
下着デザイナー鴨居羊子と画家鴨居玲。姉弟共に才能に恵まれ活躍するが、パワフルで逞しい姉に対して繊細で内にこもりがちな弟。共依存とも言える姉弟関係と支えた盟友司馬遼太郎。羊子がガーターベルトにヒントを得て下着屋を立ち上げ、世間知らずが故に騙される辺りはハラハラしながらも面白く、晩年の姿は切なく、しかし力強く生きたその人生は心に響く。2023/03/11
天の川
65
子どもの頃、関西ローカルの番組で時折見る鴨居羊子はとてもカッコよかった。大人になってから、鴨居玲の絵にとても惹かれた。苦しさや寂しさを掻き立てられるような昏い絵。今回、姉弟がこれほどまでの共依存関係だったことに驚いた。姉は弟の才能を信じ、支援するためにも下着デザイナーとして財を成し、画才に自信のない弟は姉に依存しながらも描こうとする。姉に依存する玲の性懲りのなさに読んでいて辟易としたけれど、描けない苦しさに苛まれたのは、それだけ絵と真摯に向き合った結果なのだろう。そして、玲が羊子の頑張りの源泉だったのだ。2023/06/13
真理そら
62
下着デザイナー鴨居羊子と画家鴨居玲の物語。二人の父親もパワフルな人物なのに驚いた。絵を描く才能以外が欠落した弟と弟の才能を信じて結果的には追い詰めたかもしれない精力的な姉の結束の強さ。司馬遼太郎や今東光の優しいまなざしが印象的な作品だった。鴨居羊子は愛想のないひとであっても人を引き付ける魅力があったはずなのでそのあたりがもう少し書き込まれているともっと感動的な物語になったかもしれない。2023/12/16
蒼
32
美術芸術画家にはとんと疎くて、鴨居玲という画家が実在している事を知らず、物語の中盤でネット検索してその作品の一部の画像を見た。作家の司馬遼太郎さんが「玲の作品は私小説だ」と表した意味がとてもよくわかった。自分の才能を信じつつも世の中の評価を得られず、自分の中の絵を描ききれずもがいて周囲の人を傷つけ依存し、迎える自死。そんな弟を支え続けた姉羊子も又才能に溢れ、時代に抗いながら女性下着の世界を一新させる。依存関係にもなりそうな危うい姉と弟は、ある意味で他人には踏み込めない世界に生きていたのだろう。2023/03/07
toshi
10
植松三十里お得意の(?)、(私の知らない人の)伝記。 今回は鴨居羊子と鴨居玲という下着デザイナーと画家の姉弟の物語。 どこまでが事実かは分からないけれどこれを読む限り、玲は周りの人に面倒かけまくりで、読んでいて嫌になる。 いくら才能が有るからって人間として最低。 事実なら仕方ないけれど、いかにも芸術家に有りそうな感じってことで書いたとしたらやり過ぎ。 どちらかというと羊子の方はサイドストーリ的な扱いになってるけれど、嫌な気分にさせる玲の話と逆にして欲しかった。2023/03/28
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