出版社内容情報
日本初の超高層霞が関ビル竣工から約50年間に大きく変貌してきた東京の、建築、都市、環境分野での都市史である。
「東京区部にあり、時代の公益的な思潮を切り拓く建築」と著者たちに定義された「都市建築」。これまでの超高層化の経緯とこれからの都心建築の在り方を探るべく、都市計画や建築設計の実務者の実践を収録する。
目次
1 「都市建築」を考える(言葉の定義:本書で用いる「都市建築」の概念;社会背景:「都市建築」を生じさせる諸要因;法制度の更新:「都市建築」における手法の検討 ほか)
2 「都市建築」を振りかえる(資料編1:「都市建築」の実例;資料編2:「都市建築」の集積過程)
3 「都市建築」を語る(座談会1:これまでの/これからの「都市建築」;座談会2:次世代価値の可能性を「都市建築」に埋め込もう;インタビュー:次世代の「都市建築」への提言)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鵐窟庵
5
本書は霞ヶ関ビルの建設から、現在の都市再生まで俯瞰しながらも、詳細な制度論や計画体系や図面などをまとめている。2000年以降の規制緩和から都市再生の流れが制度を追って書かれている。後半の対談も具体的にその場に入って参加したくなるような論点が多々あった。ハイライトは1960年代では、財界人がニューヨークを目指して豊かな都市計画を行う目標から、今に至るまで超高層ビルがどんどん建てられたが、対談では上海の都市計画「上海2035」がモデルに挙げられ、過度な開発を防ぐ統制の効いた優れた事例として紹介されていた。2021/10/13
jackbdc
4
都市建築の変遷を独自の視点で捉えたもの。霞が関ビルを計画していた60年前のエピソードで、当時の建築家(磯崎新)がビルと高速道路の建設費用を比較して公益への意義に悩んだり、エリマネ的視点の不存在を嘆いたりする様子を見て現代より初心で謙虚な印象を受けた。都市建築の5大プレイヤーとして①行政、②地権者、③設計者、④施工者、⑤有識者が挙げられており、各PJの特長により連携体制が異なる様相が興味深かった。最近では時代の要請により、脱設計主義的柔軟性や人間中心主義が求められているという。如何に対応していくのだろうか?2021/11/03
そうき
0
東京都心の大規模開発「都市建築」をめぐる展開について、法制度、個別事例、日本設計という集団に着目しながら論じる。 それぞれ時代に影響を与えたという点で選ばれた事例はやはり特例が用いられていることが多く、開発諸制度の意図、実例、限界が描かれていると感じる。 後半の座談会では今後の新しい使われ方の展望が見えて興味深かった。2022/02/23
snzkhrak
0
近代から今に繋がる東京の都市開発の流れが網羅されていて興味深い書。日本設計のOBの方々が中心になってまとめている。こう俯瞰すると改めて大きな流れの中にいるんだなと実感する。やはり東京都心部は歴史的に過密との戦いである。民間は副都心等の都心周辺部の開発へ誘導されてきた時代を経て、現在は都心再生をインフラ改良を組合わせて進める。さて今後はどう進むのか。2021/12/28
YuYu
0
ここ100年の東京が蠢くように変わってきたように、その時代ごとの転換になるような「都市建築」が現れてきた。長期的や大規模的なプロジェクトではその都度、法や規制も議論し発展してきた様子が見て取れる。時代ごとの文脈を強く感じたのが面白い。これからの新しい発想の土台となる資料だった。2021/11/22