出版社内容情報
鮮鮮烈なマゼンタ(赤紫色)のコンテナやコンテナ船を見たことがありますか? 日本海運業の存亡を賭けた日本郵船、商船三井、川崎汽船のコンテナ船事業部門の大統合で誕生したシンガポールに本拠を置くオーシャン・ネットワーク・エキスプレス、略称ONE。2017年に設立されたONEの軌跡とコロナ禍による世界のコンテナ業界の大激動を追ったビジネスドキュメント。著者は海運専門紙記者と海運研究者。
世界第2位のコンテナ港を擁するシンガポールで、邦船3社の30代、40代が中心となって作り上げた19カ国のスタッフを抱える多国籍かつ世界標準のスタートアップは、結果としてコロナ禍によるサプライチェーンの混乱とコンテナ運賃急騰などもあり、2年連続で2兆円の利益を上げる。赤字お荷物部門からの大逆転劇だ。
成功のキーワードは、「出島組織」。その定義は、以下の2点。
①本体組織から何かしらの形ではみ出して
②新しい価値を生む組織
ONEの目覚ましい成功は、日本の伝統的な大企業、いわゆるJTC(Japanese Traditional Company)の再生の方向性を示す格好の事例と言えるだろう。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Lara
83
日本の船会社、NYK, M-O, K-Line 3社のコンテナ部門がまとまって、シンガポール拠点の会社を作り上げた。それまで大赤字だった部門が、22年3月期は、税引後利益2兆円と言う、親会社をしのぐ利益を上げた。その会社ONEが出来上がるまでの経緯が、書かれている。官の指導、資金をあおぐこと無く、民間人の自由な発想力で進められた。読み物として、とても楽しめた。2023/04/05
kk
20
図書館本。先の見えない構造的な事業不振を背景に、邦船三社のコンテナ部門がスピンオフ・統合されて発足した日の丸コンテナ会社“ONE"。本書は、同社の誕生に至る苦難の道のりとその後の輝かしい歩みを追いながら、コンテナ海運ビジネスの特徴や現況、海運各社の国際的な離合集散などがじっくり語られます。「プロジェクトX」的な感動のノンフィクションってわけじゃありませんが、コンテナ輸送の奥深さや海運業全般を取り巻く雰囲気のようなものが感じられて、船好きや海運ファンにとっては読み応えのある一冊だと思いました。2024/07/13
SHIN
18
本書は、日本を代表するコンテナ邦船3社(川崎汽船、商船三井、日本郵船)による出資会社 通称 ONEの設立経緯が記載されている。本部機能をシンガポールに移管した意味は深かった。世界中にあるコンテナ約170万本を管理している技術は感服した。2023/12/29
Tadashi_N
17
しがらみレス、ベストエフォート、ベンチャーマインド。2024/03/12
だ
9
日本郵船と商船三井と川崎汽船のコンテナ部門がスピンアウト&事業統合して設立された新会社の話。業界の歴史や課題、事業統合に至った背景などが丁寧に描かれていて素人にも分かりやすかった。大変勉強になった。 タイトルからして事業統合に「成功した」と断言しているが、正直言って直近の好業績はコロナバブルでしか無いわけで、成否が問われるのは正にこれからだと思う。 全体として、やや提灯記事的な色合いが濃いのが気になる。まぁ、特定の企業に焦点を当てる本はどうしてもこうなるよなぁと目を瞑った。2024/01/16
-
- 洋書
- Logicomix