Miniature scores
ラヴェル ピアノ協奏曲ト長調 左手のためのピアノ協奏曲

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  • サイズ A5判/ページ数 34,1/高さ 21cm
  • 商品コード 9784276921559
  • NDC分類 764.392
  • Cコード C1073

出版社内容情報

ラヴェルの2作の人気ピアノ協奏曲を1冊に収めたお買い得なミニチュア・スコア。作曲家=ピアニストによる解説も読み応えがある。

1928年に大成功を収めたアメリカ演奏旅行の後、2度目の演奏旅行を計画した作曲家が自作自演するために着想した「ト長調」と、第一次世界大戦で右腕を失ったウィーンのピアニスト、パウル・ヴィトゲンシュタインの委嘱で書き下ろされた「左手」は、1929年から翌30年に掛けてほぼ同時に作曲が進められた希有な作品群。二つの作品は一見(一聴)まったく異なる指向のもとに書かれたように見える(聴こえる)。小編成オーケストラによるモーツァルト時代の協奏曲、急緩急で駆け抜ける、軽やかな見世物小屋の雰囲気を醸す「ト長調」。ソロ・パートの音響的なバランスに配慮し、3管編成の堂々たる体躯で書かれ、低減のうごめきの中から現われるソロが、続けて演奏される緩急緩の最後には、明瞭な音像が水面上に表わす「左手」。この、きわめて個性的な特徴を持った2曲は、当時の作曲家の頭を占めていたアメリカ旅行の“残像”(ジャズやスピリチュアル、ニューヨークの高層建築群など)が、色濃く反映されている。細かく見ていくと、音程構成の酷似、リズム構造の特徴、ブルーノートへの傾斜、などが共通して指摘される。既刊『ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番』に続いて、楽曲解説を担当した筆者は、作曲家でありピアニストであるという意味で、ラフマニノフやラヴェルと同じ地平で、作品の成り立ちを“読める”人。ここに展開されているのは後づけの分解ではなく、作曲家がさまざまな音素材からどのように作品を組み立てたか、がわかる文章と言えるだろう。すべての譜例は、捉えやすい大譜表に移し替えられ、読者の理解を助ける。「ト長調」「左手」それぞれの解説の最後に、この2曲の相関関係を解き明かす、「相関図」とその説明を掲載する。この2曲を聴くときに、別の展開が頭のなかに鳴り響いてしまってもおかしくない不思議さが、ここで明かされるかもしれない。2曲ともそれなりのページ数があり、1曲ずつ刊行してもよかったのだが、上記「相関関係」を明らかにするためには、2曲を1冊に収める必要があり、その意味でも大変お買い得な一冊。

楽曲解説=野平一郎
 ピアノ協奏曲 ト長調
 左手のためピアノ協奏曲
 2つの協奏曲の相関関係について
楽譜本文
 ピアノ協奏曲 ト長調(第1楽章/第2楽章/第3楽章)
 左手のためのピアノ協奏曲

【著者紹介】
東京藝術大学音楽学部、同大学院修士課程を経て、パリ国立高等音楽院卒業。その後、イティネレールやIRCAMにおいて電子音響音楽やコンピュータ音楽を学ぶ。ピアニストとしては、多くの現代作品を日本・世界初演。東京藝大音楽学部ソルフェージュ科准教授を経て、現在、作曲科教授。静岡音楽館AOI芸術監督。最新刊に『作曲家から見た ピアノ進化論』(音楽之友社)がある。

目次

ピアノ協奏曲ト長調(アレグラメンテ;アダージョ・アッサイ;プレスト)
左手のためのピアノ協奏曲