感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
81
〈ケアをひらくシリーズ〉の一冊。精神科の患者であると同時に、看護師でもあった女性。複雑性PTSDの診断を受け、「こころの痛みがあまりにもひどい時、腕を切って体が痛みを感じてくれると、そちらに意識が向いてこころの痛みを一時でも忘れさせてくれる」とリストカットをくり返す。複雑性PTSDに至った経緯はわからないが、両親が不仲で別居しており、自分が病人となることで、家族の均衡を保つ「アイデンティティファイド・ペイシェント(IP)」だと自己分析する。その体験から、家族内の絡まった糸をときほぐそうとした記録である。→2025/04/11
ネギっ子gen
54
【腕を切って体が痛みを感じると、こころの痛みを一時でも忘れさせてくれる】※キツイけど、読むべき本です※ 複雑性PTSDを生きた女性の自叙伝。解説(「命懸けで書かれた自傷の教科書」)は松本俊彦先生。「おわりに」で、<未だに、私は自分で自分を傷つけることをやめることができない。簡単には治らない。胸の上の重石の苦しさはますます行き場を失くした。それでも命の砂時計の最後の一粒が落ちるまで、幸せを生み出す力と、それを受け容れられる強さを手に入れようと、たゆまぬ努力を積み重ねるしかない>と――。享年26歳。合掌……⇒2025/05/13
shikashika555
39
読み進めるうちに手足の先が冷えてきて辛くなる読書体験。 よくこれだけのものを書けたなという驚きと、出てくるものを書かずにはいられない言葉に置き換え活字にしなくてはやっていけない感覚があったのだろうという納得めいた感情と。 彼女の書くものを(すでに亡くなっておられるが)この先も読みたいと思った。 看護師としての視点を持つ当事者研究。ずば抜けた言語化の才能と文才、病と自分を俯瞰する能力と分析力を持った体験記。 読み手を切りつけてくるような勢い。その全てに恐れながらも魅力を感じてしまう。2025/02/14
akiᵕ̈
29
齋藤塔子という人の26年生き抜いた中での、まさに命を懸けて綴った心の声がギッシリ詰まった一冊。父と母それぞれに思う所があって不眠や精神を蝕み苛まれ、自傷を繰り返し続けた人生。そんな中にありながら、東大に現役で入り看護師として働いてもいたのが何よりの驚きだったけど、"精神科の患者一人一人も物語を持った「人」である”と、自身の体験を実名で言葉にしたかったという強い意志をも持つ、何ともアンビバレントな状況は紙一重なのだろうか。確かに読んでいて、これは物語なのかと思ってしまう程の文章力を感じたので残念です。2025/01/25
ばんだねいっぺい
22
じゅくじゅくと痛む傷口から、その痛みの苦しさ、なぜ、傷が出来たのかが伝えられてくるようだ。とにかく、苦しい、苦しいとシグナルが鳴りやまない感覚に読んでいてぐっと詰まった。写真が笑顔なことが幸いであるが、その裏には。この本を教科書とは言えないな。2025/05/13
-
- 和書
- 法学