感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
85
〈ケアをひらくシリーズ〉の一冊。精神科の患者であると同時に、看護師でもあった女性。複雑性PTSDの診断を受け、「こころの痛みがあまりにもひどい時、腕を切って体が痛みを感じてくれると、そちらに意識が向いてこころの痛みを一時でも忘れさせてくれる」とリストカットをくり返す。複雑性PTSDに至った経緯はわからないが、両親が不仲で別居しており、自分が病人となることで、家族の均衡を保つ「アイデンティティファイド・ペイシェント(IP)」だと自己分析する。その体験から、家族内の絡まった糸をときほぐそうとした記録である。→2025/04/11
ネギっ子gen
61
【腕を切って体が痛みを感じると、こころの痛みを一時でも忘れさせてくれる】※キツイけど、読むべき本です※ 複雑性PTSDを生きた女性の自叙伝。解説(「命懸けで書かれた自傷の教科書」)は松本俊彦先生。「おわりに」で、<未だに、私は自分で自分を傷つけることをやめることができない。簡単には治らない。胸の上の重石の苦しさはますます行き場を失くした。それでも命の砂時計の最後の一粒が落ちるまで、幸せを生み出す力と、それを受け容れられる強さを手に入れようと、たゆまぬ努力を積み重ねるしかない>と――。享年26歳。合掌……⇒2025/05/13
shikashika555
41
読み進めるうちに手足の先が冷えてきて辛くなる読書体験。 よくこれだけのものを書けたなという驚きと、出てくるものを書かずにはいられない言葉に置き換え活字にしなくてはやっていけない感覚があったのだろうという納得めいた感情と。 彼女の書くものを(すでに亡くなっておられるが)この先も読みたいと思った。 看護師としての視点を持つ当事者研究。ずば抜けた言語化の才能と文才、病と自分を俯瞰する能力と分析力を持った体験記。 読み手を切りつけてくるような勢い。その全てに恐れながらも魅力を感じてしまう。2025/02/14
ちえ
36
複雑性PTSDの診断を受けた作者は東大卒で看護師の道を選んだ。リストカット、OD、アルコールは苦しみを一時的にでも消す方法。強制入院で身体拘束され、その三週間で自分の一部が死んだ人間と感じ、それを行っている医療者に対して〈復讐心、柔らかく言えば悔しさ〉で文章を書く。自分の過去、家族を書いていくことはどれほど苦しかったろうか。それでも彼女はしないでは居られなかった。享年26歳で彼女は亡くなりこの本が残った。その事を振り返る時「人の尊厳」という言葉を簡単に口に出すことが出来ない。⇒2025/06/01
ムーミン
35
端から見れば、「どうしてそんなふうに受け止めてしまうの?もっと楽に考えればいいのに……」と感じてしまうが、本人にとってはね。これまで出会った、塔子さんと同じように自分ではままならない自分と格闘し続けている子ども、保護者、先生たちの顔や姿が浮かんできました。百人いれば、百人違う声に、自分の中の正解を作らずに耳を傾け続けていきたいと思います。2025/08/10