内容説明
二・二六事件の当日、蒲生大将が自宅で拳銃自殺。だが、殺人の疑いも出てきた。戦争への色濃さを増す戒厳令下の東京にタイムスリップし、事件に巻き込まれた孝史はどう行動するのか。再び現代に戻って来られるのか―。大きな歴史の転換点に送り込まれた時、人には何が出来るのかを問う、著者会心の意欲作。
著者等紹介
宮部みゆき[ミヤベミユキ]
1960年生まれ、東京・深川育ち。法律事務所勤務を経て、87年「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。以降、「龍は眠る」で日本推理作家協会賞(92年)、「本所深川ふしぎ草紙」で吉川英治文学新人賞(同年)、「火車」で山本周五郎賞(93年)、「蒲生邸事件」で日本SF大賞(97年)、「理由」で直木賞(99年)、「模倣犯」で毎日出版文化賞特別賞(2001年)、「名もなき毒」で吉川英治文学賞(07年)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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タツ フカガワ
68
下巻は上巻にも増して一気読みの面白さ。蒲生元陸軍大将の自決に他殺の疑いがかかるミステリーの趣もあれば、平成生まれの孝史がこの時代に生きて行こうかと思う昭和の原風景も魅力的。それらが太平洋戦争への発火点となる二・二六事件に絡んでいて、やがて蒲生家の人々のドラマへと移っていく。そして見事な終章へ(72歳のふきが18歳の孝史に宛てた手紙に思わず落涙)。そのどれもが読み応えがあって、またもや「すごいな、宮部みゆき」となりました。2021/08/12
あらいぐま
55
SFものって好きだけど、大きな時代の流れは変えられないという発想は割と新鮮だった。歴史は一人の偉人が作るものではないという言葉を思い出した。遠い昔であっても現代人の私達とさほど変わらない庶民の生活があったこと、そしてそこで懸命に生きる人々にとって未来は予測できないこと等色々考えさせられた。主人公みたいに歴史の行末を知っているからこそヤキモキするが、そこに生きている人を批判するのはまさに作中で言われるまがいものの神の何者でもない。最後のふきの手紙はJINを思い出してしまい、もう少し長い話だったら泣いていた。2024/01/14
カブ
54
主人公孝史が2.26事件の真っただ中へタイムトリップしてしまうSFであり、そこで起こった自決なのか殺人なのかの事件に巻き込まれるミステリーでもあるこの物語の結末は果たして…。歴史的な事実が丹念に書き込まれていて、架空の人物である蒲生大将が実在するかのようで、平成から次の年代へ移るこの時期に、昭和を振り返るのもイイかなと思います。2017/12/02
はるき
48
宮部みゆきさんは、ルールに厳しい作家だと思います。タイムトラベルだけど、道理を曲げない姿勢が好き。SFであり歴史であり人情。圧巻の出来でした。2017/12/01
みつ
47
下巻にはいり俄然面白くなる。「事件」の「謎」が提示され、関係者が絞られている様も、この日の出来事と密接に関連。そこからの人間関係が徐々に炙り出されていく様も見事。ミステリ的興趣よりもこちらの方が上回る。主人公がひた隠していた時間旅行についてとんでもない事実が明らかになるのは、強引な展開なようでいて読む方としては加速度がついているので頓着しなくなってくる。春たけなわの終章がまた切ない余韻を残す。この本が執筆された当時に近い「現代」の1994年と1936年、58年の隔たりというのも、この物語の成立に不可欠。2024/04/16