出版社内容情報
伝説の刀鍛冶・虎徹には壮大な夢があった。己を超える刀を鍛えるべく、命を懸けた男の一代記。時代小説の新分野を切り開く野心作。
内容説明
越前から重病の妻と共に江戸へと向かった鍛冶の秘めたる決意。それは、「己が作った兜を、一刀のもとに叩き切る刀を鍛える」という途方もないものだった。後に彼の刀を、数多の大名、武士が競って所望したという、伝説の刀鍛冶、長曽祢興里こと虎徹の、鉄と共に歩み、己の道を貫いた炎の生涯を描く傑作長編。
著者等紹介
山本兼一[ヤマモトケンイチ]
1956年、京都市生まれ。同志社大学文学部美学及び芸術学専攻卒業。99年「弾正の鷹」で小説NON短編時代小説賞を受賞。2004年『火天の城』で松本清張賞を受賞。09年『利休にたずねよ』で第140回直木賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
101
江戸初期の伝説の刀鍛冶・虎徹。鉄と共に歩み、己の信念を貫いたその半生。山本氏の「清磨」を読み同じ刀鍛冶の話があるのを知り、引き続いて読みました。いや、実に良かった。ただひたすらに名刀の凛冽な姿を想い、潤いのある地金を望み、たおやかな刀文を願う。その一事に自分の生涯のすべてを費やした男の物語。男は志に生き、矜持に死ぬ。それを地でいく人生だったと思います。そんな虎徹を脇から支える妻ゆきの姿もまたいじらしい。秀吉や信長のような戦国の英傑も良いですが、こうした人材に光を当てるのも上手いと思いました。★★★★★2014/06/21
文庫フリーク@灯れ松明の火
59
『志に生き、矜持に死す』 新選組局長・近藤勇の愛刀として知られる虎徹。甲冑(かっちゅう)鍛冶から刀鍛冶を志し、出雲のたたら場(製鉄所)を訪れし時はすでに三十六歳。素材たる鉄へのこだわりから職人の眼で、人夫としてたたら場に臨む。砂鉄含みの土を堀り灼熱の溶鉱炉へ炭を運ぶ。前半およそ70ページを費やす江戸初期の製鉄・たたら場の描写だけでも一読の価値。 江戸で鍛えし自信の一刀。試刀家にして罪人斬首人・山野加右衛門との、文字通り首を賭けた勝負に敗れ、生まれ変った興里に授けられた法名〔一心日躰居士 入道虎徹〕 →続く2011/02/12
バイクやろうpart2
40
『花鳥の夢』、『火天の城』に続く山本兼一さん3作目です。絵師、棟梁、そして刀鍛冶‼︎ と凄まじい職人の生き様を知り得たことに感謝です。山本兼一さんの小説を読み終えると、何時も活力を戴いている気がします。そして、下手が良い!何故か?いい響きです。磊落に笑う!使ったこと無いですが、いい言葉です。 では4冊目 楽しみです。 2017/07/13
佳乃
38
名刀、「虎徹」が出来るまで、なんと自惚れが強く傲慢だったことか。それが、ページを捲るたびに変わる彼に心から惹かれてしまった。また、妻のゆきがいたからこその彼だろう。曇りのない心で、一心に鉄を打ち自分の心が映し出される刀。観るもの持つ者の心を惹きつけてならない刀。邪心のないことはやっぱりいいなぁ。胸がいっぱいになってしまった。2017/12/11
天の川
36
職人が道を模索し、技を極めていく過程は本当に興味深い。それは人間としての成長を見つめることに他ならないから。刀鍛冶を志し、「仕事は下手がいい。下手なやつほど懸命に、必死にやる」と言われた虎徹。鬼気迫るほどの精進。気負い過ぎ、鼻っ柱をへし折られ、やがて「刀は死生の哲理を極める道具、気品と尊厳を形にするのだ」との域に達する、鉄に魅せられたその半生。妻ゆきとの夫婦の情愛、おじ才市の最期…何度も瞼が熱くなりました。骨太の上質な作品。堪能しました。2014/08/24