内容説明
18世紀のパリ。孤児のグルヌイユは生まれながらに図抜けた嗅覚を与えられていた。真の闇夜でさえ匂いで自在に歩める。異才はやがて香水調合師としてパリ中を陶然とさせる。さらなる芳香を求めた男は、ある日、処女の体臭に我を忘れる。この匂いをわがものに…欲望のほむらが燃えあがる。稀代の“匂いの魔術師”をめぐる大奇譚。
著者等紹介
ジュースキント,パトリック[ジュースキント,パトリック][S¨uskind,Patrick]
1949年、ドイツのアムバッハ生まれ。新聞や雑誌の編集者をしながら書き上げた戯曲「コントラバス」で一躍注目される。85年に発表した『香水―ある人殺しの物語』は80年代ドイツ文学界最大のベストセラーとなり、23カ国語に翻訳された
池内紀[イケウチオサム]
1940年、姫路市生まれ。東京外国語大学独語学科を卒業し、東京大学大学院修士課程修了。文芸評論家、翻訳家。世紀末ウィーンの研究で知られる
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
532
嗅覚を軸に据えた、とても珍しい物語。小説や詩において、通常は最も重要な役割を担うのは視覚だろう。次いでは聴覚か。それから触覚と味覚。もっとも、「匂い」そのものが中心ではないが、サド侯爵の一連の作品、あるいは象徴派の詩の中ではそれなりに重要な役割を果たしていた。『香水』は、物語の舞台を革命前夜のパリ、そして南フランスに置くが、そこにもまたサドを想起させるものがある。そして、他者との関わり方という点においても。超絶的な嗅覚を持った主人公グルヌイユ。これだけのページ数を一気に読ませる筆力は注目に値する作家だ。2015/08/14
遥かなる想い
390
何とも不思議な物語だった。 「香り」と「鼻」が主役の 物語。そこには人間性の 立ち入る要素など何もないかのように、話は進む。 舞台は18世紀のフランス。 匂わない男グルヌイユは 異能の「香り」を 見分けられる鼻を持つ…登場する人物の誰もが 心が喪われており、匂い しか意味を持たない。 人を陶酔させる香りを 求めたグルヌイユの行き 着く先は…不思議で哀しい 香りの物語だった。2015/08/14
neimu
175
自分の香りを持たない人間は、自分の存在が信じられないが故に、フランケンシュタインを創るように、自分のための最上の香りを求めて奇跡の「香水」を創り上げたのだろう。多くの人々を犠牲にして。だから、それをふんだんに用いることは、自分の存在を過度に露わにすることになる。それは、粛清される運命を導くことになる。 純粋な孤独の、恐ろしい結末。映画よりも何よりも、原作は素敵でおぞましい。
ケイ
155
グルヌイユは比類なき香りを調合しているだろうに、開いたページから漂よってくるのは、むせ返る過剰な臭い。終始私の頭に浮かんだのは、老いにほぼ完全にその美しさを奪われたかつて美しかった顔に、化粧を散々に施し、しわに粉が固まり、真っ赤な口紅を唇からはみ出させ、目から一筋真っ黑な涙を流す、おぞましく悲しい顔の老女。良心を持たなかったグルヌイユは、自らの欲望のままに行動したが、満足ということを知ることはなかったのではないか。キリストが御子なら、グルヌイユは神の恩寵を受けなかった不完全な生き物に思えた。2016/04/24
優希
131
鼻本来の嗅覚に焦点を当てたような作品でした。悪臭と芳香の入り交じるパリの中で天才的嗅覚を持つ殺人鬼・グルヌイユの一代記が描かれます。人を酔わせる香水を作り出す魔術師が、自分の求める香りを放つ少女を求めて殺人を繰り返していくのはある意味哀しみに満ちていました。天才的嗅覚を持ったがために、他のことに気づくことなく、色々なものを捨ててきたのでしょう。グルヌイユには悪も正義もないのかもしれません。香りに執着し、導かれたのは血塗られた香水。香りが全てだったからこそ悲劇が生まれていったのかもしれません。2015/07/01
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- 和書
- 重光・東郷とその時代