内容説明
1944年6月6日、ノルマンディー上陸作戦に従軍したキャパは一番乗りを果たし、戦争写真家の声望をさらに高める。やがて戦争が終り、彼は“失業状態”になるが、女優イングリッド・バーグマンとの恋におちる…。20世紀前半の歴史は戦争の歴史でもあるが、その歴史をレンズで切り取った冒険家はインドシナの戦場で最期を迎える。
目次
その日を待ちながら
Dデイ
パリ解放
ただいま失業中
イングリッド
銃とシャンパン
父祖の地で
出口なし
伝説の囚人
五月二十五日火曜日午後三時
残されたもの
著者等紹介
ウィーラン,リチャード[ウィーラン,リチャード][Whelan,Richard]
1946年、ニューヨーク生まれ。エール大学で美術史を学ぶ。“ART news”の他、“Art in America”“Portfolio”“CAMERA Arts”などの各誌に広く寄稿する
沢木耕太郎[サワキコウタロウ]
1947(昭和22)年、東京都に生まれる。横浜国立大学卒業。79年「テロルの決算」で大宅壮一ノンフィクション賞、82年「一瞬の夏」で新田次郎文学賞、85年「バーボン・ストリート」で講談社エッセイ賞、2003年、ノンフィクション作品での功績に対して菊池寛賞を受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Toshi
11
リチャード・ウィーラン著、沢木耕太郎訳によるキャパ評伝の第3巻は、キャパの戦場写真家としての地位を揺るぎないものにするD-Dayから始まる。戦後は、女優イングリッド・バーグマンとの恋や、著名作家との取材旅行など、セレブぶりを発揮するが、その作品は戦場から離れるともに輝きを失って行く。そして日本に滞在中「ライフ誌」の依頼で急遽ヴェトナムに向うこととなり、そこで地雷に触れて命を落とす。実際の人生も、自ら作りだした虚像も、波瀾万丈だったキャパの生涯。沢木はそれを「冒険」と言うキーワードで語っている。 2021/03/07
tora
4
ノルマンディー上陸作戦をとってから、インドシナで死ぬまでの約10年。30代をえがいているにも関わらず、どこか「晩年」という雰囲気がただよいます。あるいはそれは、17歳で亡命し早熟するしかなかっただろう彼の必然だったのかもしれないと思いました。訳者が最後に、キャパの悲劇性が戦場でしか「傑作」をとれなかった事、としていますが、それに加えて「早熟」もまた彼を不幸にしたのではないかと、思いました。写真集がほしくなりました。2012/04/27
ichiro-k
3
斜め読み、飛ばし読みで読了。正直といえば正直な伝記だが下品。同じ表現方法で書評すると「この本は、まるで出勤途上で犬のウンチを踏んだような気分だ。」2010/04/09
Mariamaniatica
2
ゲルダと二人、売るために考え出した「ロバート・キャパ」というイメージに近づくため、またそれを超えるために生きた人生のように思えます。 帰る国がないということは、彼が結婚という形式に踏み切れなかったことに大きく影響を与えているのかも。 アイデンティティーをどこにおくか、またそのアイデンティティーもたやすくなくしてしまうものであることが、意識下にあったように思えます。 「ティファニーで朝食」をのホリーと重なってしまった。 キャパとその彼を囲む人々、原作者、そして沢木耕太郎さん、いずれの仕事も魅力的ですばらしく2012/05/24
チョイローモンゴル
2
パリのドイツ軍からの解放時やイスラエル建国時の雰囲気が本当によく伝わりました。しかしこの人はイングリットバーグマンと付き合ったりとかヘミングウェイと絡んだりとかからも分かるけど人格的な魅力たっぷりです。2012/03/03