内容説明
不倫相手と夏休み、キューバに旅立った女性教師を待ち受けていたのは非難の嵐だった。表題作の他、女同士の旅で始まった生々しい性体験告白大会、若い女の登場に翻弄されるホームレスの男達、など七つの短篇を収録。女性の奥底に潜む毒を描き、直木賞受賞以降の刺激的かつ挑戦的な桐野文学の方向性を示す。
著者等紹介
桐野夏生[キリノナツオ]
1951年、金沢生まれ。成蹊大学法学部卒業。93年、「顔に降りかかる雨」で第39回江戸川乱歩賞受賞。99年、『柔らかな頬』で第121回直木賞、2003年、『グロテスク』で第31回泉鏡花文学賞、04年、『残虐記』で第17回柴田錬三郎賞、05年、『魂萌え!』で第5回婦人公論文芸賞、08年、『東京島』で第44回谷崎潤一郎賞受賞。1998年に第51回日本推理作家協会賞を受賞した『OUT』で、2004年エドガー賞(Mystery Writers of America主催)の候補となった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
356
7つの短篇を収録。桐野夏生は本質的には長編小説の作家だと思う。構想は大胆だが、細部を積み重ねていくことによって、有無を言わせぬリアリティをそこに現出させていくからだ。その意味では本書に収められた短篇群は時としてややもの足りなさを感じないではないが、彫琢の度合いはやはり見事である。ただし、それが長編を上回ることがない。逆に言えば、それだけ長編小説の緊密度が高いのだ。篇中では、やはり表題作に唸る。それはコクトーの"Enfant terrible"を想起させる。次いでは「怪物たちの夜会」の持つ理不尽か。2017/06/12
優希
97
濃厚な味わいのある7つの短編集でした。どの物語にも女性の持つ毒が感じられます。刺激的で挑戦的な香りの漂う世界に酔わされました。でも桐野作品は長編の方がより深い味わいで好みですけれども。2017/12/08
miyumiyu
96
桐野さんの毒が満載の短編集。「植林」は悪意の塊で、落とし方が秀逸。「ルビー」と「愛ランド」は、おぞましくて気持ち悪いけど引き込まれた。不倫の末の「怪物たちの夜会」、ブラックユーモアが効いてる「毒童」の救いのなさも半端ない。「アンボス・ムンドス」は、小学生女子の怖さに凍りつく。どれも期待を裏切らない桐野ワールドで大満足。刺激とスリルが欲しい時にぴったりの一冊。2018/08/09
k5
85
世紀の別れ目くらいに書かれた短篇集。最近のものに比べるとすこし荒い感じもあるが、それでも一気に読んでしまった。生きづらさの元になっている世界の不穏な感じが次から次へと湧いてきて、それを掬わずにいられないような。ちなみに「植林」はいま映画化されてる塩田武士作品と同じモチーフだし、今村夏子っぽさもあります。ひょっとして現代文学の源泉はここにあるのかも?2021/02/20
takaC
84
怖い。どれもこれも。2015/12/10