出版社内容情報
誇り、家族、一生を賭けた仕事。すべてを失った弓成に、思いがけないニュースが届く。沖縄基地問題の原点を見据える巨篇、完結。
内容説明
曲折の末、弓成は沖縄へたどりついた。さまざまな人々と出会い、語らううちに、沖縄返還取材に邁進していた頃は見えていなかった沖縄の歴史と現実に直面する。再びペンを手にした弓成が再生への道を歩き出したとき、あの密約を立証する公文書が発見されたというニュースが飛び込んできた。感動の巨篇、ここに完結。
著者等紹介
山崎豊子[ヤマサキトヨコ]
大正13(1924)年、大阪市に生れる。京都女子大学国文科卒業、毎日新聞大阪本社に入社。昭和32年、生家の昆布商を題材にした処女長篇「暖簾」を書下し刊行。翌33年、「花のれん」で第39回直木賞受賞。同年退社、執筆に専念。大阪商人の典型を描いた作風は「船場狂い」「しぶちん」と続き「ぼんち」で大阪府芸術賞受賞。その後、激動する時代の中で、勁く生きる女性たちを描く作品を発表する。近代史や現代史にかかわる長篇作品を発表し続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
zero1
122
山崎の主張、それは戦争と沖縄。死に場所を求めるように弓成は沖縄へ。そこでは「陛下の赤子」という皇民化政策の末、見捨てられた人たちがいた。集団自決に鉄の暴風。悲劇は戦後、返還後も続いた。狭い土地に米軍基地が集中。95年には少女暴行事件で県民の怒りが沸騰。今も残る地位協定は誰のため?後半、米国立公文書館で何を見つけた?秘密保護法にも関連。フィクションとして弓成の喪失と再生を描くと同時に戦争の悲惨さを見事に訴えた。未完の絶筆となった「約束の海」前に書かれた作品で、彼女の強いメッセージを知るには読むしかない!2019/08/26
ユザキ部長
93
無惨に敗れさる。為すべき事は何か?絶望の淵から思う。しかし、どう考えても迂闊で脇が甘かった。振る舞いひとつで現代史は変わっていたのではないか?完璧な人間は存在しない。しかし、個が公に打って出る時は綻びがあってはいけないのか?拳の振り上げ方とタイミングか?それが運命であろうか?そんな事を思った。2017/05/05
キムチ
66
筆者最後の長編作品。4巻目は筆者が語りたい想いを弓成の生きざま 背後に立つ様で総括している感あり。インタビューで発語すら吐くように述べる山崎氏の姿が脳裏をよぎる。題の意は弓成であろう。国VSジャーナリズムの図式で押しつぶされた犠牲者・・弓成。引き寄せられたかのように住み着いた沖縄、当地出身の学者が暴く密約の真相。今なお続く沖縄の苦しみと他岸の火事のていを為すウチナンチュー。ペンを持つ使命として書かずには死ねない想いだったろう。組織が先鋭化し、現代化することは宿命的に秘密保持が高度化して行く。2014/02/12
修一朗
65
第4巻,山崎先生は主題の一つとして,未解決の沖縄問題,沖縄は本土の犠牲であり続けていることを訴えている。綿密な取材に基づく沖縄の歴史が鮮やかに描かれている。最後までスタイル貫いた。ただ小説として伝わったか?…語り部の選択を間違えていないか?弓成は自分がのし上がるために沖縄返還の機密を利用しようとした人。彼は沖縄の辛い過去を後追いで知っただけ。久々の山崎作品,往年の豊子節は健在だったが心に届いたか。私は20年前に山崎作品を読んだ時のような魂がゆさぶられる体験をもう一度したい。やはり大地の子,再読か…2014/04/27
あらたん
61
完結。最終巻は裁判後の長いエピローグのような感じだった。作者の沖縄への想いがとても感じられた。戦争を経験された方の思いは戦後世代には計り知れないものがある。戦争経験世代がお亡くなりになった後、日本がまた道を誤らないか心配。2024/10/27