出版社内容情報
日本文化と河川は切っても切れない関係にあり、様々な物語が繰り拡げられた。淀川、利根川、木曾川、筑後川の歴史文化を解明する
内容説明
昔から様々な物語がウォーターフロントで繰り広げられてきた。本書は淀川、利根川、木曽川、筑後川を中心に、全国の河川の歴史と文化を解き明かす。都市づくり、町づくりが21世紀への環境問題の優先課題として論じられる今日、本書は水という最も基本的な問題を、自然と歴史と文化から見直した世評高い名著である。
目次
淀川篇―琵琶湖・この大いなる湖(「弥生」の川;日本海文化;日本海側の山と川;琵琶湖総合開発の行方)
利根川篇―日本の水問題(治水の川;水不足と水害;柔構造と硬構造;都市化の中の農業用水)
木曽川篇―自然保護と林業(木材の川・苛酷な川;かけがえのない資源・土壌;山の文化;海岸林と砂丘)
筑後川篇―水を作りだした歴史(ゼロからの出発;美林の生いたち;筑後川四堰とクリーク;下水を大地に返す)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
misui
3
淀川、利根川、木曾川、筑後川を中心に、日本人と水との関わりを論じる。河川の歴史を辿り水利用のあり方を説くところから、歴史を知ることが今生きることにつながるという、いわば「歴史の意義」のようなものが明確に見てとれた。川、森、土壌、すべてに人間が関わってきた歴史があり、日本人はそれを適度に手を加えることで維持してきた。放置しておけば自然は回復するといった自然保護も、田舎に負債を払わせる都会の優越も、歴史を無視した無責任な心性が根底にある。責任を引き受ける方法を探るためにも長く読まれるべき名著だろう。2010/06/22
よっちゃん
2
古書店の平台で発見。良書。知らないことばかり、水のみならず山川田んぼ天井川、琵琶湖、林業、し尿処理。深刻な問題ばかり。2019/07/02
筑紫の國造
1
『水の文化史』という表題ではあるが、語られる内容は川を中心としつつも過去・現在・未来の日本人と大地との関わりを広い視野で捉えている。日本人がどのように川―すなわち土壌―と歩んで来たか、川を守るために「山の民」がどれほどの苦労させられてきたか、そして現代がいかに「土」を無視しているかなどが平易な言葉で語られる。特に、「自然保護」といえば単に森林を守ることだという勘違いに警鐘を鳴らし、人間が適度に干渉してこそ本当の自然保護であるという指摘は、現在益々重みを増しているように思える。2015/09/06