出版社内容情報
亡き親友の妻との不倫に走る夫。妻は夫の部下と関係を持つ。そんなある日、夫は部下に離婚届を託し失踪した…。表題作など全八篇
内容説明
亡き親友の未亡人・清江とたった一度だけの肉体関係を持った真山。妻の康子は夫の部下、白川との不倫に走った。そんなある日、真山の不意の失踪、そして白川の手に残された一枚の離婚届には真山の名前だけが書き込まれていた…。表題作など男と女のミステリアスな関係を描いた粒選りの短篇八篇を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんらんしゃ🎡
41
★「王女様、どの都が一番お気に召しましたか?」「…いずこの地も忘れ難く、一つだけ挙げるは難しく......『薄紅の糸』、『薄紅の糸』です。」と清楚なヘップバーンが言う。★この短編集はどれもストーリーが見事で一つ選ぶのは難しいが敢えての一編。男も愛人も妻でさえ清楚でも真っ正直でもない。真実の口に手を入れれば誰もが噛まれるに違いない。2020/09/13
竹園和明
37
連城三紀彦の世界を短編に落とし込んだ8篇。湿気を帯びた男女の業のような世界は健在だが、短編作品という事もあって深みがやや浅い気がする。一つのキーワードを引き継ぐ形で場面が変わるという仕掛けを施した作品もあるが、それらは残念ながら“仕掛けありき”で書かれている感じで物語の連続性に強引さが目立つような…。「薄紅の糸」「黒い月」は長編にまで作り込めば面白い作品になった感じで、勿体ない気がした。どの作品にもプチ逆転は散りばめられていて、連城作品の魂は生きている。2020/09/25
papako
34
恋愛ものの短編集。しかし、すごい!どれも見事な一本背負いを決めてくれます。愛よりも人の気持ちの怖さが描かれている。騙し騙されする男女の二転三転する心情が見事です。いやー、やっぱすごいですね。2015/03/23
bluemint
11
うまいっ!と思わず唸ってしまった。あまり有名でもない短編集だが、とても凝った手法で書かれている。ある動作が次の文のきっかけとなったり、視点が軸足を中心にバスケットのピボットのようにくるくる変化する。もちろんミステリーの代表選手でもあるので、切れ味は抜群。鮮やかに陽と陰が瞬時に入れ替わる。読むべき本はまだまだ多い。2018/07/20
🐾ドライ🐾
6
主題は浮気不倫横恋慕の短篇八篇。2人の関係が壊れてしまったが実は…という展開がミソではあるが、全体的に愛憎の“憎”の部分が弱めで、なんだかんだサッパリすっぱり別れたりくっついたりしてキレイに纏まってる。だから良くも悪くも小説のなかの出来事だと突き放してしか読めなかった。現実はもっとドロドロして醜く、深く傷つく人が出てくるはず。人が誰を好きになろうが知ったことではないけど、理性を持たないと。2020/11/28