内容説明
織田信長、浅井長政らの屋敷に侍して、機をうかがう於蝶の、六年前、どことなく少女めいた硬いふくらみに引きしまっていた肉体は、どこも成熟しつくしている。(大好きな上杉謙信公のために…)常人ばなれした女忍者の秘めた女心と香りたつ生命が、戦場に魅惑的な光をなげかける。人気を博した忍者小説三部作、第一弾。
著者等紹介
池波正太郎[イケナミショウタロウ]
大正12(1923)年、東京に生れる。昭和30年、東京都職員を退職し、作家生活に入る。新国劇の舞台で多くの戯曲を発表し、35年、第43回直木賞を「錯乱」によって受賞。52年、第11回吉川英治文学賞を「鬼平犯科帳」その他により受賞する。63年、第36回菊池寛賞受賞。作品に「剣客商売」「その男」「真田太平記」“必殺仕掛人”シリーズなど多数。平成2年5月3日没
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感想・レビュー
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とん大西
105
上巻の川中島合戦から下巻は対織田戦を想定して浅井家中に潜入。狙う標的は只ひとつ-信長の首。少女の頃から10年を経てなお燃え続ける於蝶の執念。おばばら残り僅かな仲間とともに刃を磨き時を待つ。艶やかにして残酷。冷静なようで人臭い。忍び欺き疾走、そして忍ぶ。織田・徳川と浅井・朝倉が姉川でぶつかる大一番。高まるボルテージと忍者達の跳梁跋扈に痺れます。字面から浮き出る戦場の迫力に魅了されます。さて、戦の結末は言わずもがな。信長に苦汁をのまされ続ける於蝶。どう生きるのか。くの一ながらダンディズム漂うとこに惹かれます。2020/01/21
雪風のねこ@(=´ω`=)
77
信長の浅井朝倉攻めまでを描く。敵味方が入れ替わり、裏切り裏切られ、掟の為には味方をも殺す、という様がまさに戦国の世を思わせ物語に引き込まれる。奇しくも享年が同じとなった謙信が信長と対照的な位置づけで描かれていた様に思う。ただ杉谷忍びは無念であったろう。少数精鋭とはいえ世を覆すほどの力たり得ないのだろうか。だがその不可能と思える事を苦しみ抜いてやり抜く様は、やはり熱いんだよね。とても面白い。熱中してしまう。その熱さの間に、於蝶と小平太・伊佐木と源七の情愛をしっとりと描いているのがもう素晴らしい。2016/05/06
キャプテン
39
★★★☆☆_「忍者ハッタリくんだってばよ!フェア」第五弾。夢はジェームズボンド、心はアルセーヌルパン、大和魂を伝える忍たま、ハッタリくん登場だってばよ!前回に引き続き、杉谷忍びの女忍びから学ぶってばよ!もう途中から、忍者たちの活躍は影を潜め、完全に歴史モノになってたってばよ!それでも分かったことがあるでござる!忍者とは、どれだけ人をやめることができるか、どれだけモノになりきれるかが、本質にある。人らしさを追い求めると二流であるという辛さ…。彼らの死に際は、人であったとも言えるし、モノであったといえるが…。2019/06/16
真理そら
32
再読。蔵書整理のついでに読んでみた。甲賀の女忍者・於蝶は魅力的だけれど、敗れる側にばかり忠義立てする杉谷一族が切ない。2019/05/07
ぶんぶん
24
【図書館】川中島の合戦から姉川の合戦まで、於蝶はひたすら信長の首を狙う。 敬愛する上杉謙信りため、是が非でもと思う。 若い若いと言っても、37歳になってしまった、思いを寄せる小平太も34歳の壮年である。 愛する小平太と別れ、ひとり杉谷忍びの遺志を継ぎ織田信長を倒すため決意する。 長い於蝶の話もこれで終る、伊佐木ばばと同じ様に7✕歳まで生き続ける(火の国の城)於蝶の活躍は凄い。 歴史物はあまり好きでは無い、どうにかこうにか読み切れたのは池波氏の筆のおかげである。 果たして覚えている事が出来るだろうか・・・2022/09/02