出版社内容情報
天下取りを果たした関白は茶や女性を愛する傍、朝鮮出兵を決断した。新資料を縦横に駆使、厳密な取材を基に送り出される秀吉の決定版
内容説明
関白秀次に死罪を与え、秀吉は愛児秀頼の政権を築かんとする。しかし、北京を首都とする大帝国建設の前途は険しく、朝鮮の戦局は膠着する。「五大老よ。わが夢は浪花の露と消えゆとも、秀頼の事は頼んだぞ」。慶長三年、盛大な醍醐の花見を境に秀吉はとみに衰えていく…。破天荒な夢を見続けた寵児の最期を活写する大尾の第五巻。
感想・レビュー
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yoshida
122
最終巻。太閤豊臣秀吉は愛児秀頼の政権を築こうとするが寿命が迫る。北政所派と淀殿派の派閥が残り、一枚岩ではない家臣達。血族が少なく、秀吉の死により瓦解する可能性の高い組織体制。隠然たる力を持つ家康。甥の関白秀次を誅した頃から秀吉は急速に老いる。朝鮮征伐は兵站の脆弱さで苦境に陥る。醍醐の花見の後で秀吉は衰弱する。死を前に自分の所業を思いだし悪夢を見る。「儂が眼の前に信長旦那がおいでなされてなん。もはや藤吉郎よき時分にあいなれば、迎えに参ったるぞとの御意なりしだわ」。譜代衆と一門衆のなかった豊家の哀しさをみた。2016/01/01
イエテイ
2
出世物語のような英雄秀吉の前半生に比べ、すっきりしないのは朝鮮の役を含む後半生。信長の弟子で情報と兵站のスペシャリストの秀吉がなぜそこで躓いたか。「夢のまた夢」は豊臣家その後を思うと示唆的。2018/01/20
デントシロー
1
秀吉晩年の権力狂いから無謀な朝鮮出兵を行い覇権者としての地位が揺らいでくる。また我が子秀頼の溺愛ぶりが批判的に描かれており天下国家を私物化してしまう姿は共感できない。しかし、臨終の場でおねに夢を見てたのかと聞かれ信長に早く冥土にこいと誘われれたと告白する場面は人間らしさが見られ頷ける。2013/02/27
茶幸才斎
1
天下人への階段を駆け昇った豊臣秀吉の生涯を追う最終巻。朝鮮の戦況は膠着し、小西行長と沈惟敬が日明両国を欺き講和を図るも失敗、再び朝鮮半島が戦場となる。藤堂高虎が李舜臣の水軍に敗北し、加藤清正が蔚山城で過酷な篭城戦を戦う中、病に臥し死期を予感する秀吉の関心は、ただ我が子秀頼のことのみとなる。この世を懸命に生きた末に一体何が残せようか。戦乱の日の本を統一して権力を手にし、大陸まで併呑しようとした男は、息子に将来を約束することが叶わなかった。「人の命は笹の上の霰よのう。はらはらと、はらはらとのう」(p.398)2013/07/15
ホームズ
0
1996年5月23日初読