内容説明
戦争末期、疎開先の熊本の小学校に入学した少年は、山河に魚を捕り鳥を追ううち自然の豊饒さに感動し、学び、己れの成長を自覚してゆく。しかし少年はやがて受験勉強に励むようになり、都市と田園の生活に引き裂かれていく…。自伝の傑作『旅へ』につながる、多感な少年期を綴った新しい成果。他に「南にありて」13篇を収録。
目次
少年記(川が美しかった夏;村の青年たち;ぼくたちの三角ベース;兄の土俵入り ほか)
南にありて―鹿児島日記(さようなら、道ネエ;薩摩隼人の宴;詩吟を差し入れた夜;九十九島の焚火 ほか)
著者等紹介
野田知佑[ノダトモスケ]
1938(昭和13)年、福岡県生まれ。早稲田大学文学部英文科卒。教員、雑誌記者を経てエッセイストに。「川遊びカヌー」を提唱し、国内をはじめ欧米、オーストラリア、ニュージーランド、インドネシアの川を楽しむ一方、環境破壊につながる河川改修、ダム開発をおしすすめる国土交通省の蛮行を一カヌーイストの立場から告発し続けている。82年、『日本の川を旅する』で第9回日本ノンフィクション賞新人賞、98年、一連の活動に対して毎日スポーツ人賞文化賞を受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たーくん
7
再読→→→戦争末期、疎開先の熊本の小学校に入学した少年は、川でエビやフナを捕り、山にメジロを追い、自然の豊饒さに夢中になる。年上の青年に憧れ、その技を学んで成長する日々。しかし少年はやがて大学受験のため勉強に励むようになり、都市と田園の生活に引き裂かれていく。生き生きと働く母と虚脱した父。敗戦に屈折してゆく兄。他に「南にありて」13篇を収録。熊本の川で過ごした黄金の日々が著者をつくったことが鮮やかにわかる、胸おどるエッセイ集!2019/08/23
Hiroshi Matsui
1
カヌーイスト野田知佑の少年期の回想録。この人は好きな川遊びをして、それを本にして生活しているといううらやましい人。うらやましいと簡単に言ったが、そう生易しいものではなく、多くのものとのトレードオフであることは容易に想像できる。話は物心ついたとき(最初の記憶)から始まり、東京での予備校時代まで。戦時中の話なども面白かった。この本を読めば、彼の川へのこだわりが少し理解できた気がする。あとがきで「自分の人生のコースを修正して、本当にやりたいことだけをやって生きるようになったのは四〇歳を過ぎてからだ。」と言ってい2006/06/22
じむくろうち
0
時代は少し違うが小生も野田氏と同様な生活環境の中で育った。毎日、川や 山で遊び、この本に出てくるようないろんな種類の大人やこどもがいた。英語を一生懸命勉強したのもよく似ている。自分の少年期を重ねあわせながらおもしろく読んだ。それにしても、文章がうまいなあ。色、におい、音など五感をフルに活用しているので文章に躍動感がある。「青年記」も読んでみたいものだ。2016/02/08
-
- 和書
- ゲルニカに死す