出版社内容情報
築地の破れめから往きあう隣家の人妻との密通が幕府をゆるがす事件に。平安末期から鎌倉期の人間模様をいきいきと描く魅力の八篇
内容説明
名国司の評判も高い藤原貞成の姫が誘拐され、侍女のあゆちが身代わりに。あゆちはかつて賊に殺された貞成の部下の遺児であったが。築地の破れめから往きあう隣家の人妻との密通が、鎌倉幕府を揺るがす大騒動に発展する。平安末期から鎌倉期の「史実」に隠された意外な顛末をいきいきと描きだす八篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とん大西
110
どことなく雅やかでシニカルな人情の機微。平安末期から鎌倉時代にかけて描かれた8つの短編集。少しばかり地味な印象ですが、永井さんの柔らかで艶やかな筆致が描く名もなき御家人や下僕、そしてその想い人の心情哀情にはなかなか心惹かれるものがあります。その歴史の裏側をそうみるのかぁなんてあらためて敬服したり。お気に入りは『雨の香り』。許されぬ恋だったか。2019/06/27
ワカバ
3
平安末期から鎌倉初期にかけて動乱の時代を描いた短編集。歴史書に残る数行のエピソードを膨らませ、様々な立場の人物の悲哀を描く各短編それぞれに独特の余韻があり大変面白かった。 ちょうど今年の大河ドラマが鎌倉幕府を扱っていることもあって、より一層それぞれのエピソードが興味深く、引き込まれた。2022/03/09
F・Ferdinand
3
平安・鎌倉時代の歴史小説集。「その眼」「雨の香り」「猪に乗った男」「重忠初陣」など運命の転変する一瞬を描いた作品、「闇の通い路」「宝治の乱残葉」など歴史上の事件を別角度から照射したミステリ風の作品など、8篇の短編をつうじて、鎌倉幕府草創期の時代の流れが浮かび上がってくる。一見、どの作品もさらりと書かれているように見える。けれど、史料に対する無理のない解釈や、登場する虚構の人物と史実・史的人物が齟齬をきたさず融合しているあたり、歴史小説家としての永井路子の力量を感じられる粒ぞろいの作品集になっている。2015/06/14
源義
2
やはり永井路子は面白い!と思える短編集。史料に残るほんの数行の事件から想像を膨らまし、時に名も残らぬ人々を描きあげる。 「お告げ」と「その眼」が特に永井路子らしくて好み。鎌倉時代ものがよいのは有名だが、王朝国家期のものの中にも名作が多い。2023/04/22
おなす
1
平安時代2024/03/29