出版社内容情報
それまでにない形で、鎌倉に成立した武士たちの政権。そのまわりに燃えさかる情熱と野望の葛藤を見事に描き出した連作小説。来季NHK大河ドラマ「草燃える」原作
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kiyoshi Utsugi
41
・悪禅師 ・黒雪賦 ・いもうと ・覇樹 の4つの短編から成り立ってます。 「悪禅師」は阿野全成(幼名は今若)、「黒雪賦」は御家人の梶原景時、「いもうと」は阿野全成の妻で源実朝の乳母であり、北条政子の妹であった北条保子、「覇樹」は北条政子の弟である北条義時を主人公としています。 一族の間、御家人同士の間でドロドロとした人間関係を描きながら、最後は承久の乱で勝利をおさめ、北条義時が東国の王者から日本の王者となり、死を迎えるまでとなっています。 特に梶原景時の描き方が、今まで思っていた景時像と違って新鮮でした。2021/09/11
エドワード
34
1979年の大河ドラマ「草燃える」の原作のひとつ。鎌倉時代の人物を通して関東武士団の成熟の過程を描く。義経の兄、今若こと阿野全成と北条政子の妹、保子が夫婦となり、頼朝と政子の影となって、時に無邪気に、時に政略的に動く様が実に面白い。石橋山の合戦で頼朝を助けた梶原景時は、頼朝の意中を察し、頼朝に成り代わって彼の意を実現していく。源頼朝という多面的な人物の不気味なこと、後白河法皇顔負けだ。彼の子、頼家と実朝は父の重荷に耐えられず、政子は公私の感情に引き裂かれる。そして頼朝の宿願は北条義時へと受け継がれるのだ。2016/08/26
カレー好き
31
鎌倉殿の13人。ドラマも面白いし、その頃の小説を読みたいと思い手に取る。義時が主役のドラマであるが、この時代をさまざまな登場人物切り口に描かれる。ますます大河が楽しみになった。2022/05/21
けやき
30
阿野禅師、梶原景時、北条保子、北条義時それぞれの視点から鎌倉幕府成立前後を描いた作品。この時代の小説は頼朝と義経との関係のものくらいしか読んだことがなかったので面白かったです。2016/04/23
クラムボン
28
以前読んだ時の感想は「贅肉を削ぎ落した連作短編の傑作」だった。今回「鎌倉殿の13人」を見つつ読むと印象が少し変わった。そこらを書こうと思ったのだが…進藤純孝氏の解説を読んでスッ飛んでしまった。彼は昭和39年に永井路子の会見記を書いている。「炎環」が直木賞を受賞する2か月前で、候補作は未だ挙がってない時期だ。昭和25年に永井路子と鎌倉の川端康成邸で会っている。新潮社と小学館、担当編集者同士だったらしい。「作品を燃え立たせる熱に乏しく、締め木の効いていないうらみを残している。」が進藤氏の評で、かなり手厳しい。2022/10/01