出版社内容情報
「文藝春秋」一九九〇年十二月号が発掘・掲載してこの国の内外に一大反響をまきおこした、最後の昭和天皇第一級資料ついに文庫化成る
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おさむ
36
昭和天皇が自ら太平洋戦争について語った昭和史の「超一級資料」だけに読み応えがあります。親しいものに話した内輪話なのか、それとも東京裁判向けの計算し尽くされた弁明書なのか。真実は藪の中ですが、木戸からの影響が色濃い天皇の人物評や宮さま同士の微妙な感情のずれなど、興味深い独白がたっぷりあります。天皇とマッカーサーの対談の通訳を務めた御用掛の寺崎英成氏が書き写して保存していたもので、戦時中、苦労を重ねた米国の妻子が後にその重要性に気づき、文藝春秋での発表につながったというエピソードも泣かせます。2018/04/16
イプシロン
29
(再読)独白禄の受け取り方は読み手しだいだろう。天皇の戦争責任に関しては賛否両論があるからだ。しかし、責任を感情論だけで考え、法律的、政治的、道義的、形而上的、あるいは立憲君主としての責任というように分けず、とにかく責任があるという乱暴な意見には、私は首を傾げざるを得ない。今とは異なり、情報の入手はほとんどアナログ。世論も世界的に攻撃的な風潮だったといった時代性を無視しての評価も乱暴だと思うからだ。ともあれ、即位27歳、戦争勃発時は40歳であったというように、陛下の発言と年齢を照らし合わせて読むくらいの2023/06/11
金吾
25
◎昭和天皇が戦時中に何を感じていたのかがよくわかる本です。特に感じるのは部下重臣に対する非常にシビアな評価です。また18年の段階で勝利の見込みを失い単独不講和の確約がある故にドイツの敗北を願う等情勢認識もすごいと感じました。面白かったです。2021/03/26
イプシロン
24
独白禄そのものは昭和天皇の人柄、「人間天皇」がよく現れている。だが、皇居という閉鎖的な環境にあって、側近からの助言は相当に影響が強かったのだとも思える。特に影響力があったのは西園寺公と木戸内府あたりか? であっても高い知性で絶対平和主義と輔弼を堅持しようとした天皇の姿は読み取れる。もし天皇が側近のロボットになってしまっていたら……そう考えると寒気がした。独白禄は'97年になって英語版が発見され、東京裁判の訴追から天皇を守るための文書であることがわかった。そうなるとまた読み方も違ってくるのだが……。2015/10/09
西
23
あまり昭和史に詳しくないものの、天皇が考えておられたことが分かって面白かった。戦争を止めることが出来なかった理由も、それ一つではないかもしれないが、初めて知った。また天皇の歴史とは別に、この文書を残された寺崎さんとその奥さん、そして娘さんの人生もまた興味深いものだった2020/02/09