文春文庫<br> 朱の丸御用船

文春文庫
朱の丸御用船

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 233p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784167169350
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

アッシュ姉

69
先日読んだ『破船』が面白かったので、同じく江戸時代の廻船ものである本書を手にした。こちらは御城米船(幕府領の年貢米を輸送する御用船)をめぐり、実際に起きた騒動をもとに書かれた歴史小説である。積荷の年貢米を狙う者たちの視点と、横領の罪を見逃さない役人の目線で語られていく。吉村さんの筆は誰を責めているわけでも、誰の味方をしているわけでもない。淡々と出来事を積み重ねていくが、捜査の手が伸びるにつれ緊迫感は高まり、その迫力に息を凝らして読むばかりである。読むほどに虜になっていく吉村昭さん16冊目。2018/03/23

キムチ

55
何回読んだことか・・氏の作品で好きなものを選べと言われても「無理」。大王崎、阿児の土地勘が有るので天保期ながら、漁にすがって生きるしかない寒村の情景が目に浮かぶ。「破船」と酷似の中身ながらこちらは記録の形をとっているだけに詳細な描写は氏の骨頂。「日本残酷物語」に掲載されたモノを膨らませる力も然り。弥吉キヨ夫婦に幽かな光を当て、当時の人間像に魂を入れ動かし語らせる事で読み手に作り物ではないリアライズが生まれている。現存する当時の写真をみると一様に、民は昏い表情。因習としきたりと地縁血縁にがんじ絡めにされ・・2021/07/25

てつ

50
やはり吉村さんの時代小説には読ませる力がある。きちんと史料にあたって、整理して書かれているからだろう。2018/10/07

Shoji

44
江戸時代のお話です。お上への上納品を積んだ船が難破し、流れ着いた先は貧しい田舎の漁師町でした。船に積載された上納品をめぐる、貧しい漁村の民たち、それに付け入ろうとする悪い奴、そしてお役所、それぞれ騙し騙され合いです。犯罪小説、時代小説といえばそれまでですが、しみじみと読ませる筆致です。鳥羽から伊勢志摩辺りの漁村が舞台となっています。吉村昭さんが、地域の図書館で史料を丁寧に発掘し、自治体誌を読み進め、地域の伝承の聞き取りをした様子が感じられます。三重県にお住いの方にお勧めの一冊です!2021/09/17

シュラフ

37
歴史を語るにあたって、為政者の目線から語るのか、それとも庶民の目線から語るのか。吉村昭は歴史において埋もれてしまいそうな事件を拾いあげて、これを庶民の目線から語っていく。根気よく資料を拾い集めて、吉村昭ならではの作品に仕上がっている。破船した御城米船(江戸へ年貢米を送る船)から米俵を横領したという波切事件の顛末を通じて、当時の幕藩体制の統治の様子や経済の仕組みというのが実によく見えてくる。そしてひとつの事件によって今までの平穏な暮らしが一転して破られてしまう村民たちの悲劇。人は歴史に流されつつ生きていく。2017/06/10

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/562752
  • ご注意事項

最近チェックした商品