出版社内容情報
昭和初頭、主人なき曠野と呼ばれたこの封禁の地に日本が描いたはかなくも大いなる幻影。帝国建設から崩壊までの巨大で虚ろな歴史のドラマを未公開史料と新証言で再構成する会心のライフワー
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
筑紫の國造
9
戦史作家の第一人者による、満州帝国の歴史。膨大な文献とインタビューによって、満洲帝国の誕生から崩壊までの描き出す。一巻は満洲事変の勃発と清朝の廃帝溥儀が上海を脱出するまで。石原莞爾や板垣征四郎など有名な軍人はもちろんだが、無名の人々の動きまで実に緻密にかつ淡々と事変勃発までの動きが描き出されている。柳条湖爆破までの各自の思惑が理解でき、物語を追うように歴史を追体験できる。ただ、事件まで丁寧な文スピード感に若干の遅さも感じられる作品ではある。2025/02/23
春菊
0
日本陸軍という組織は、他国と戦争を始めるということを軽く考える体質なのだろう。中国における対日感情の悪さ・日本権益の確保が解決すべき課題であるという認識が正しいにせよ、その解決方法は武力行使であり、その意思決定自体も軍が行うという考えは、尋常でない。当時の一般国民は、そういう意思決定過程の下で、事変が謀略として始まったことすらも知らなかった(敗戦後東京裁判で知った)という現実は現代に生きている私から見ると、とても恐ろしいことだと思う。2022/02/13