出版社内容情報
三井三池の騒然たる大争議のさなかに、突如炭住地区をおそったポリオの流行、そして従兄の死……細菌をばらまく黒い手の正体を追う男に謀略機関の影がまつわる
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
54
60年代、アメリカ軍の細菌戦術を意識した国内のポリオ事件にまつわるミステリ。熊本の衛生研究所員香取喜曾一の自殺と北海道で局地的に流行った小児麻痺にはなんらかの関関係があるのか。そのウィルス研究の母体は?それが国家的な規模で行われているのだとの思いにとらわれたとき、主人公は、もはやこの世界から排除される側へとすべり落ちていく。2022/11/30
でんすけ
2
「わたし」は、従兄の自殺を機に、北海道、九州と各地のウイルス感染症の集団感染の調査にのめり込む。そしてウイルスの背後にある国家的な陰謀に迫っていく。はじめ心惹かれていたがなかなか手を切れない女との逢瀬も、次第に重荷になり心に絡まってくる。読んでいて、この思い込みの強さに呆れながら、それでも心情に自分を重ねてしまう。一人称視点で書かれているのがこの物語の凄まじいところ。2023/01/24
URI(病気養生
1
ポリオを描いたネタだが、むしろ日常に潜む非日常を感じたとき人はどうなるのかというものを描いておりエンディングの意外さを含めネタは尽きないもんだと感じる。2019/12/27
Fumihiko Kimura
0
再読。60年代のポリオ流行に、愛憎や731部隊や帝銀事件を絡める。素材を放置した感もあるが、ラストの鑑定書による終結はいかにも清張。ポリオ流行はコロナ禍にあって頗る現代的。個人的には熊本が舞台の一部になっていて好きだ。2021/10/02