出版社内容情報
頻発するテロ、絶えざる国家間対立。人を衝き動かす民族、宗教、資本をダイナミックに論じ、ナショナリズムの正体を解き明かす。
内容説明
今も世界のあちこちで民族問題の炎が噴出し続けている!テロの国際的拡散、移民・難民の増大、労働者間の国際競争、トランプ後のアメリカで台頭する白人至上主義、中東からの入国規制―。“民族オンチ”の日本人だからこそ知っておくべき、民族問題の現実と基礎理論がこの一冊に!
目次
第1講 なぜ日本人は民族問題がわからないのか
第2講 民族問題の専門家スターリン
第3講 「民族」は作られるか―アンダーソン『想像の共同体』批判
第4講 ゲルナー『民族とナショナリズム』の核心
第5講 民族理論でウクライナ問題を読み解く
第6講 民族理論で沖縄問題を読み解く―アントニー・スミス「エトニー」概念から考える
著者等紹介
佐藤優[サトウマサル]
1960年東京都生まれ。作家。同志社大学大学院神学研究科修了。元外務省主任分析官(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
岡本
114
民族問題に疎い日本人に向けた入門書といってもいいだろう。沖縄、スコットランド、ウクライナなどの独立問題などを中心にナショナリズムの定義や歴史上の民族問題へのアプローチなど多岐に渡って分かりやすく解説されている。推薦図書も各章に記載されているので民族問題を深堀りしたい人にはお勧めの一冊。2017/11/13
hiro
74
日本人は、宗教問題と民族問題に鈍感だと思う。宗教については池上さんの本を読んだが、佐藤さんの題名もズバリ『民族問題』というこの本が出たことを知って読んでみた。まずは原初主義、道具主義という2つの方法論から始まり、アンダーソン、ゲルナーと続いたところでは少し後悔したが、ウクライナ、スコットランドと沖縄の事例から民族問題を読み解くことで理解することができた。推薦図書の『小説琉球処分』を読んでいたこともよかった。オーウェルの『1984』の舞台をみにいく前日に、偶然この本に『一九八四年』が登場したのには驚いた。2018/05/16
kawa
42
アーネット・ゲルトナー、アントニー・スミスら学者の民族理論を通して、世界各地で起こっている民族問題を解説する。民族問題のスペシャリスト・スターリン、スコットランド・ウクライナ・沖縄等での現実論はなかなか面白い。「直観されたものを共有する共同体。それが「民族」(中略)ナショナリズムは宗教にきわめて近似している」なるほどなのだが、学問的理論と現実がうまく連結して理解できないところが課題、時期を見ての要再読書。2020/06/27
おさむ
34
同志社大での講義録をまとめて修正した新書。比較的わかりやすく、世界の民族紛争の構造を頭に叩き込むにはぴったり。学術的ではあるが、随所に佐藤氏の実体験が反映されており、すっと腑に落ちます。ベネディクトアンダーソンが唱える国家やエリート層が支配の為に民族を作ったとする「道具主義」で考えがちでしたが、それだけでは不十分。産業社会の成立と結びつけるアーネストゲルナーや、アントニースミスのエトニーという概念を加えることでクリアになる。スコットランド、ウクライナ、沖縄。そこに横串をさして理解する大切さを感じます。2018/05/04
さきん
31
民族とは何か。日本人が民族問題に疎いのはなぜか。民族の概念を認識するのに使える言葉、エトニーとはなにか。想像と共同体、ゲルナーの民族とナショナリズム。著者はゲルナーやスミスの見方を重視している。ゲルナーの著書は読んでみたい。2018/03/16