出版社内容情報
復活第一回の芥川賞を受賞した由起しげ子、小谷剛氏の作品から、戦後文学に一時代を画した井上靖、安部公房、堀田善衞氏らにいたる多彩な名篇、佳品を八篇収録した
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
114
由起しげ子「本の話」、小谷剛「確証」、井上靖「闘牛」、辻亮一「異邦人」、石川利光「春の草」、安部公房「壁」、堀田善衛「広場の孤独・漢奸」。本の話 義兄が残した本をどう扱うか。姉の食事代を本を売ってまかないたい妹の奮闘。本好きな人間にとっては興味深い話。何か課題か。全体的に暗い。2014/04/17
大粒まろん
14
本の話のみ。内容は、闘病生活を続ける姉を支える姉の夫(義兄)が栄養失調死をして、妹がその面倒を引き継ぐのだが、資金繰りに困窮し、義兄の願いとは裏腹に義兄の愛蔵書を売却する侘しいながらも周辺の人たちの温かみを感じる作品。ただ、姉の話が全く出なくなった辺りから、話が少し単調になってしまうのが残念。姉が入院していた病院は現上ヶ原病院(クリストロア)義兄の勤め先は関西学院大学。拝借したのは関西学院大学のミモザ。ミモザの花言葉は思いやり、感謝など。2023/07/23
ウイロウ
7
戦後一回目の昭和24年上期より27年上期まで(但し25年下期と27年上期は受賞作なし)。巻末に選評及び受賞者のことばを収める。井上靖(「闘牛」)と安部公房(「壁」)はのちに大作家となり、堀田善衛(「広場の孤独」「漢奸」)も文名を上げた。知名度こそ彼らに劣るものの、由起しげ子の「本の話」は現在でもアンソロジーに採用されている。冒頭から義兄の死を感傷抜きで描く凄み。小谷剛「確証」、辻亮一「異邦人」、石川利光「春の草」に至っては更にマイナーだが、作品はそれぞれに面白かった。殊に「確証」の露悪的なユーモアは出色。2016/08/15
うぃっくす
2
本の話、異邦人、春の草は文学らしくてスタンダードな話。闘牛は不可な点がないからこれは受賞ですねと評価されたのがなんとなくわかるよくできた話。広場の孤独、漢奸はなんか無難な印象だった。確証、壁、が新しいスタイルのはじまりなのかなと。なので読みやすい。個人的に好きなのは本の話、闘牛、異邦人、壁。2016/11/16
タロウ
1
芥川賞のレベルを知る為に速読する。井上靖の「闘牛」が文章の上手さにかけては抜きん出ていた。「壁」は以前読んだことがあり再読することになったが、中身は殆ど忘れていた。印象は前に受けたのと同じで何もないということであった。文章はそこそこ上手いし、短いフレーズにはハッとさせられるところもあるが、思想がない。難しいことを言っているようで何もない。「本の話」「確証」「異邦人」「春の草」「広場の孤独、漢奸」は文章は書けるのだろうが、訴えて来るものがなかった。この4巻は期待したほどのものがなかった。2020/07/15